
| マツダは常に「エンジン」へと最大限の注力を行う自動車メーカーであった |
そしてマツダは「エンジン」によって環境への対応を行おうと考える自動車メーカーでもある
マツダといえば、ロータリーエンジンや圧縮着火ガソリンエンジン、14:1という超高圧縮比の量産ガソリンエンジンなど、常に「奇抜」かつ「挑戦的」なエンジンを開発してきた自動車メーカー。
そして今回、マツダがさらに大胆な挑戦に乗り出したことが明らかになり、それが「6ストロークエンジン」の特許取得です。
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6ストロークエンジンとは?
通常の内燃機関は「吸気 → 圧縮 → 燃焼 → 排気」の4ストロークで動作しますが、マツダの新エンジンはこれに2つの工程を追加。
参考までに、ポルシェも「6ストロークエンジン」の特許を出願していて、しかしマツダのそれとは意図も仕組みも異なっており、マツダの特許におけるポイントは「ガソリンから水素と炭素を分離し、水素のみを燃焼させる」という仕組みにあります。
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- ガソリンを触媒と高熱で分解
- 水素を燃焼に利用
- 炭素は「固体」として回収し、車載タンクに一時保管
つまり「ガソリンを使いながらCO2を排出しない」という、夢のようなカーボンニュートラル内燃機関を狙っているわけですね。
排出される炭素はどうなる?
この仕組みで取り出された炭素はCO2ではなく「純粋なカーボン」。
サービス入庫時に排出する想定で、顔料や鋼材に再利用可能であると説明されており、例えばCX-5のタンクいっぱい分のガソリン(57L)を使うと、約37kgの炭素が回収される計算になり、これは約136kgのCO2排出を防ぐのと同じ結果となるのだそう。
システムの仕組み
- 通常の4ストローク
吸気 → 圧縮 → 燃焼 → 排気 - 追加された2ストローク
- 再圧縮ストローク:排気を触媒に通し、ガソリンを噴射して分解
- 再膨張ストローク:残った空気を再利用し、余剰を排出
この過程にて水素と炭素が分離され、炭素は回収装置に、燃焼は水素主体で行われることとなるのですが、これが実現できれば環境負荷削減の観点で大きな意味があり、内燃機関の存続にまた一つ「希望が生じる」ということなりそうです。
課題は「複雑さ」と「効率」
ただし、このシステムには以下のような大きな課題も残り、実際のところ過去にBMWが市販した「Hydrogen 7」では燃費が8.6mpg程度に留まっていたため、マツダの新方式も効率面では疑問が残ります。
加えて、マツダがこれまでに示してきた新しいエンジンについても「予期したほどの結果と効果が得られていない」のも事実であり、この特許についても慎重にその「成り行き」を見守る必要があるのかもしれません。
- バルブ経路の追加によるシリンダーヘッドの複雑化
- 高温環境に耐えるリフォーマーの設計
- 炭素回収タンクの重量増加
- 水素燃焼エンジン自体の効率問題
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まとめ:マツダだからこそ実現し得る「奇抜な挑戦」
しかしながら、こういった挑戦は「マツダにしかできないであろう」野心的なものであり、ガソリンを使いながらCO2を出さないという発想は、現代のカーボンニュートラル社会において非常に魅力的。
しかしその実現には膨大な技術的ハードルが存在し、それでも「奇抜だが面白い」挑戦を続けてきたマツダならば、将来的に市販車への応用が期待できるかもしれませんね。
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参照:USIPO, CARBUZZ