
| 「先駆者」と「二番煎じ」は同じ性能を持っていても”天と地ほど”その価値が異なる |
リスクを冒してでも「一番手」となる意義は大きい
2005年に生産が始まったブガッティ・ヴェイロン。
登場から20年が経った現在でも、その存在はスーパーカー史において特別な輝きを放っています。
1,001PSを発揮する8.0リッターW16クワッドターボ、最高速は407km/h。
しかも「日常で使える」ことを目指したこのハイパーカーは、いまだに自動車業界の金字塔であり続けています。
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ブガッティ「ヴェイロン」誕生20周年を祝う特別イベント「ル・プチツアー」開催。フランス・モルスハイムにオーナーが集結する
Image:Bugatti | ブガッティだけに「おもてなしも最上級」 | ブガッティ・ヴェイロン誕生20周年を祝う「ル・プチツアー」 ブガッティ・ヴェイロンは今年で20周年を迎えますが、その本拠地( ...
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ピエヒの狂気が生んだ「最終兵器」
VWグループを率いたフェルディナント・ピエヒは、アウディ・クワトロやポルシェ917などを世に送り出した稀代のエンジニア。
1990年代後半、日本の新幹線の中で「18気筒、1,000馬力、400km/hの市販車を作る」と語利、その場でW16エンジンのスケッチを(封筒の裏に)描いた話は有名ですが、結果として誕生したのが、クワッドターボW16を搭載するヴェイロンです。
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ブガッティ・ヴェイロンという“常識を超えた夢”を実現した人物──フェルディナント・ピエヒとは何者だったのか。けして限界を受け入れなかった男
| 2005年当時、「1,000馬力」はまだ空想上の産物でしかなかった時代にヴェイロンを市販 | 限界を受け入れなかった男、それがフェルディナント・ピエヒである 自動車の技術が大きく進歩する時代(ある ...
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Image:Bugatti
開発は困難の連続だった
ただし当時は「前代未聞の速度域、そして出力」に挑戦したため、その開発では苦難が続き・・・。
・駆動シャフトのシールが高速走行時に膨張して破損
・CVブーツのオイルが飛び散り潤滑不良に
・重量1,800kg超を抱えつつVW基準の品質を満たす必要
こうした「常識では不可能」な課題を解決した末、2005年に量産が開始。
450台限定で生産されたものの、1台ごとに約6億円の赤字を出したと言われています。
Image:Bugatti
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ポルシェ創業者一族、フェルディナント・ピエヒ氏が亡くなる。アウディ・クワトロ、ブガッティ・シロンなどVWグループの「顔」をつくり続けた豪傑
| ここまで方針が明確で、推進力と権力を持った人物は他にいなかった | ポルシェ創業者一族にしてポルシェ創業者の孫、さらに前フォルクスワーゲン会長、フェルディナント・ピエヒが82歳にて亡くなった、との ...
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当初は賛否両論、いまでは伝説に
発表当時、メディアや一部ジャーナリストからは「個性がない」「数字だけのクルマ」と冷ややかに見られたヴェイロン。
しかし20年が経ち、世代交代を経て再評価が進むと「狂気と情熱が作り上げたVWの最高の無駄遣い」として絶賛されるようになっており、当然ながらその価値も”うなぎのぼり”。
自動車史において、ヴェイロンは「クルマを金儲けの道具としてではなく、夢を叶えるために作った」稀有な存在であり、だからこそ今なお(商業主義が主流の今だからこそ)クールだというわけですが、「あのとき」ブガッティが困難を乗り越えてヴェイロンを世に送り出さなかったならば、そして「妥協して」想像の範疇や既存技術の範疇にとどまるクルマを発売していたならば、今日のブガッティは存在し得なかったかもしれません。
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ブガッティ・ヴェイロン開発秘話がいま明かされる:「タイヤ開発だけで5年」など時速400km/hを実現するために必要だった“ありえない”挑戦とは
Image:Bugatti | 時速400km/hの壁を越えるという前人未到の挑戦 | 当時「時速400キロ、1,000馬力」は空想上の産物でしかなかった ブガッティ・ヴェイロンが自動車の歴史を塗り替 ...
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20年経ったいまこそ「ヴェイロン」は最高潮にクールだ
そして前人未到の領域に踏み込み、夢を実現したという事実は何ものにも代えがたく、たとえその後にヴェイロンを超える性能を持つハイパーカーが登場しようとも、それはヴェイロンが開いた扉から流れ込んできた「お金儲けが目当てのフォロワー」としか受け取られず、その意味でもヴェイロンが成し遂げた偉業の価値、さらに「時代を創った先駆者の魂は色褪せない」ということがわかります。
参考までに、フェルディナント・ピエヒは当初から「1,000馬力のハイパーカー」をブガッティブランドから発売しようとは考えていなかったようで、実際にアウディやフォルクスワーゲン名義にて「超弩級のハイパーカー」をコンセプトカーとして発表しており、しかしそこで出会ったのがブガッティ創業者、エットーレ・ブガッティの「他と比べられるようであれば、それはブガッティではない」という座右の銘。
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ブガッティが「タイヤ交換一回400万円」のヴェイロンを維持しやすくする”15年保証”を発表
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これに共感したフェルディナント・ピエヒが「1,000馬力という人類未経験のハイパーカーを発売するにはブガッティブランドをおいて他にない」と判断し、ブガッティの商標権を獲得した、という背景があるようですね。
もう一つ参考までに、同氏はランボルギーニを買収しフォルクスワーゲングループに組み入れたり、フォルクスワーゲンブランドでも「12気筒エンジンを積む」超高級車、フェートンを発売するという行動を取っており、とにかく「大排気量、大パワー」を求める傾向があったことも見て取れます(同氏はポルシェ一族ではあるが、ポルシェ創業者が「小排気量」を愛したのとは対象的なのが面白い)。※そういった行動、そしてヴェイロンのプロジェクト推進も、同氏の並外れた権力のなせる賜であった
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まとめ
ヴェイロンは赤字を垂れ流し、VW経営陣を震え上がらせた「常識外れのプロジェクト」。
しかしその無謀さ、採算無視で夢を追求する姿勢こそがブガッティを再び世界の舞台に押し上げ、自動車ファンに夢を与えることになったのは疑いようのない事実です。
そして20年を経た今、ぼくらはようやくヴェイロンの真価を理解できるようになったのかもしれません。
Image:Bugatti
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