
Image:Italdesign
| 自動車デザインの巨匠「イタルデザイン」が初代NSXに挑む |
「ワンオフ」なのか「限定販売」なのか、それは現時点では不明である
イタルデザイン(Italdesign)は、自動車デザインの歴史において、まさにアイコンと呼ぶべき存在で、オリジナル(初代)フォルクスワーゲン・ゴルフにはじまり、シロッコ、デロリアン DMC-12、アルファロメオ・ブレラなど、その輝かしいデザイン実績は枚挙にいとまがありません。
さらにこれまでも、スバル SVXや初代レクサス GS、そして極めて限定的な710馬力のNISSAN GT-R 50など、日本の自動車メーカーとの協業を通じて「ジャパニーズ・オリジナリティ」を独自の視点で昇華させてきたという歴史を持ち、そして今、その巨匠が次に焦点を当てたのが「初代アキュラ/ホンダ NSX」。
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ティーザー映像から読み解く、デザインの進化:LEDとルーフスクープ
イタルデザインはつい先日この「NSXのレストモッド」プロジェクトを公表し、そして今回は「再解釈されたNSX」の断片的な映像を公開することに。
わずかなティーザークリップではあるものの、ここから現代化への明確な意図を読み取ることができます。
- モダンLEDテールランプの採用: オリジナルNSXの特徴である、車両後端全体に広がる横一文字のテールライトは健在。しかし、映像からは、そのライトがボトムエッジからアッパーセクションへと巻き付くようにシーケンシャル点灯するモダンなLEDイルミネーションに進化していることが確認できます。これは、オリジナルの象徴的なリアエンドの意匠を尊重しつつ、現代の技術と視覚的アピールを融合させる、「レストモッド」の王道的なアプローチと言えます。
- ルーフマウント・エアスクープの装着: 映像のルーフ部分には、エアスクープらしき造形が確認可能。このアイデア自体は、イタルデザインのオリジナルではなく、ホンダのスペシャリスト集団である無限(Mugen)が、公道走行可能なハードコアモデル「RRコンセプト」で同様のレイアウトを採用し、NSXのレースカーにもシュノーケル型のエアダクトは存在するものの、これはミッドシップV6エンジンへのエアフローを効率化するためのパフォーマンス志向の改変である可能性が極めて高いと考えられます。
ウェッジシェイプのスペシャリストによる「日常のスーパーカー」の再定義
初代NSXは、そのローアンドロングでシャープなノーズ、リトラクタブルヘッドライト、控えめなサイドスクープ、そしてテールセクションに統合されたウイングといった、シンプルながらアグレッシブなデザインで世界に衝撃を与えましたが、この「シンプルさ」と「機能美」のバランスを崩さずに「改善」を施すのは極めて難しい作業であると推測されます。
しかし、イタルデザインの歴史を振り返れば、彼らがロータス・エスプリやマセラティ・ボーラのようなウェッジシェイプ(くさび形)デザインに深く精通していることは明らかで、もしかするとNSXを「よりNSXらしく」蘇らせることができるのかもしれません。
オリジナルNSXの持つ、F-16戦闘機のキャノピーをモチーフにしたと言われる高い視認性(ホンダは「視界」もスポーツカーの性能の一つだと考えている)と、「日常のスーパーカー」としての実用性。
この不朽の設計思想を、いかに「やり過ぎずに」現代のトレンドと技術をもって昇華させるかが、デザインハウスとしての真価が問われるところなのだと思われます(ただ、ここ最近イタルデザインが公開している作品を見るに、まず”間違いないもの”が出てきそう)。
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解決すべき二つの重要な課題:インテリアとパワートレイン
このプロジェクトがどこまで踏み込むのか、現時点では不明瞭な点が多く残されていて、特に以下の2点は、ファンにとって最も関心が高い部分だと思われます。
1. インテリアのモダン化
オリジナルのNSXのコックピットは、ドライバーフォーカスを徹底し、視認性の高い大型の円形メーターと、機能的に配置されたセンターコンソールが特徴です。
その結果、極めてミニマリストでありながら機能的という、完璧なバランスを実現していたことが知られていますが、イタルデザインがもし、このプロジェクトでキャビンに手を入れるならば、その「機能美」を損なうことなく、現代のインフォテインメントシステムやデジタルメーターをいかにシームレスに統合できるかが鍵となります(”レトロ”を意識して昔っぽいデジタル表示を採用する可能性も否定できないが、NSXが機能的に研ぎ澄まされたクルマであることを考慮すると、そういった演出はないかもしれない)。
Image:Honda
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2. V6エンジンの進化と出力増強
初代NSXに搭載された3.0リッターV6エンジンは、チタン製コンロッドなどの先進技術が投入された「名機」として高い評価を得ていますが、その最高出力は当初の自主規制によって280馬力に抑えられており、現代のハイパフォーマンスカーの基準からすれば”控えめ”です。
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Image:Honda
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まとめ:プロジェクトの全貌公開が待たれる
このイタルデザインによる初代NSXの再解釈モデルは、ワンオフのコンセプトカーなのか、それとも限定販売されるハイエンドなレストモッドなのか、その立ち位置もまだ明らかではない状態。
しかし、ホンダの技術的な高みとイタリアのデザインの感性が融合したNSXという「日本の至宝」が、再び世界の注目を集めることは確実であり、自動車デザインの歴史における新たなチャプターが、今、開かれようとしているのかもしれません。
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