■そのほか自動車関連/ネタなど■

EVでよく聞く「400V」「800V」とは? 800Vが“圧倒的に有利”な理由、400Vとの違い、それでも普及しない理由を徹底解説

ポルシェ

| EVにおいては「800V」が圧倒的に有利だとは言われるが |

それでもなぜ多くのモデルは800Vアーキテクチャを採用しないのか


800Vアーキテクチャを採用するEVは400Vよりも「効率・性能・充電速度」で圧倒的に有利だとされており、しかも構造がシンプルになるうえ、バッテリー寿命にも良い影響をもたらすと言われます。

ただし“ある理由”で、すべてのメーカーが800Vへ移行できていないという現状があり、ここでは400Vと800Vの違い・メリット・デメリット・採用車・今後の動向までを深堀りしてみたいと思います。


「800V」「400V」問題の要約

・EVは現在400Vが主流だが、ハイエンドブランドや新世代モデルで800V化が急加速
・800Vアーキテクチャは、充電速度・効率・軽量化・熱管理で優位
・デメリットは「コスト」。部品価格が高く、車両価格に影響
・ポルシェ タイカン、キア EV6、ヒョンデ アイオニック 5、リマック ネェーラなどがすでに800V仕様
・BMW ノイエクラッセ、メルセデス・ベンツ EQシリーズなども800V化を表明
・将来的には主流化する可能性が高いが、当面は価格上昇が懸念点

【新型ポルシェ・カイエンEV】革新的800V高電圧システムで「走り」と「効率」を両立。なお冷却能力は「冷蔵庫100台分」
【新型ポルシェ・カイエンEV】革新的800V高電圧システムで「走り」と「効率」を両立。なお冷却能力は「冷蔵庫100台分」

Image:Porsche | ポルシェはEVにおいても「ベンチマーク」たる存在を目指す | 新型カイエンEVには「今までにない、新しい」エレクトリックシステムが搭載 ポルシェが新型「カイエン・エレク ...

続きを見る

L1012527


400V/800Vアーキテクチャの違い(基礎まとめ)

EVの「400V/800V」とはバッテリーシステムの公称電圧を指しており、電圧×電流=出力(充電速度)であるため、電圧が高いほど少ない電流で同じ性能を出せるのがポイントです。

【比較表】400V vs 800V

項目400Vシステム800Vシステム
主な採用車多くの量産EV(日産リーフなど)高性能EV・最新モデル
電圧約300〜450V約600〜900V
必要な電流多い少ない(約1/2)
ケーブル太さ太い/重い細い/軽い
発熱多い少ない→冷却効率UP
急速充電やや遅い高速(350kW級対応が容易)
部品コスト低い高い(最大のデメリット)
システム効率標準的高い
適性普及モデルハイエンド・次世代モデル
L1008739


800Vアーキテクチャのメリット

① 急速充電が劇的に速い

電圧が倍=必要な電流が半減し、電流を抑えたまま高出力を流せるため、高電力急速充電(350kWクラス)に強い

→ 長距離移動の自由度が大幅アップ。

② ケーブルが細くなり、車両が軽くなる

電流が少ない=配線の細径化が可能。
→ 車両重量の低減
→ 抵抗・熱も減り、効率が向上

EVは重さとの戦いのため、数キロでも大きな意味を持つ。

③ 熱管理がラクになり、バッテリー寿命にも貢献

熱はEVの最大の敵。
800Vは発熱が少なく、部品寿命・冷却効率に有利。

L1012636

④ 電費(効率)が向上する

無駄な熱が減る → 電力ロスが減る →
結果として実用航続距離の向上にもつながる


800Vのデメリット

① コストが高い(最大の障壁)

800V対応インバーター、SiC半導体、配線類など部品が400Vより高価

→ 車両価格が上昇
→ メーカー側も利益確保が難しくなる

普及が遅れている最大の理由がこの「コスト」でもあり、多くの自動車メーカーが「コストとのバランス」に悩んでいるものと思われます。

そして「プレミアムカー」であればこのコストの問題はほぼ「気にすることはない」ものの、普及価格帯のクルマであれば「いかに性能に優れようとも、価格が高くなれば誰も買わず」、ここが最大のジレンマというわけですね。

L1019921

② 充電インフラがまだ400V中心

多くの急速充電器は400V基準。
800Vの性能をフルに活かせない場所も多い(特に日本)。


800Vを採用している/採用予定のEV

既に採用している主な車種

  • ポルシェ タイカン / マカンEV / カイエンEV
  • アウディ e-tron GT
  • キア EV6
  • ヒョンデ アイオニック 5 / アイオニック 6
  • リマック 値ヴェーラ(ハイパーカー)
  • ルシード エアー(一部システムが800V相当)
DSC07685

今後採用予定(メーカー発表)

  • BMW ノイエクラッセ(2025–)
  • メルセデス・ベンツ 新型CLA / 上級EV
  • ボルボ EX90
  • GM・フォードの次世代EVプラットフォーム(計画段階)

800Vはすでに「プレミアムEVの標準」になりつつあるのが現状であり、800Vアーキテクチャ採用EVが増加することでパーツ等のコストが下がることとなれば、一気に「EV業界における革命」が進むこととなるのかもしれません。

【新型BMW iX3】次世代「ノイエクラッセ」第1弾モデル、最大航続805kmで登場。今後のBMWのデザイン、そしてテクノロジーを示唆
【新型BMW iX3】次世代「ノイエクラッセ」第1弾モデル、最大航続805kmで登場。今後のBMWのデザイン、そしてテクノロジーを示唆

Image:BMW | BMW iX3は最大805km航続、400kW急速充電対応 | ノイエクラッセがもたらす「新しいBMW」 BMWがついに次世代モデル「Neue Klasse」の第1弾として新型 ...

続きを見る


市場での位置付け・競合との比較

400V:コスト重視・大衆向け

  • 車両価格が安い
  • 技術が成熟しており信頼性が高い
  • 急速充電性能は800Vに劣る

価格競争が激しいセグメントに最適。

800V:効率・性能重視のプレミアム層

  • 高速充電能力
  • 効率・熱管理に優れる
  • 車両重量の低減
  • ハイパフォーマンス向き

今後、バッテリーが大容量化するほど800Vの価値が高まり、コストとの「バランス」の行方に注目が集まるといったところです。

L1012604


結論

800Vは、「効率・充電速度・性能・軽量化」のすべてでEVの理想形に近い技術であり、しかし現状はコストが高く、普及モデルでの採用は限定的。

とはいえ次世代EV(BMW・メルセデス・ベンツ・ボルボなど)では800Vが前提となり、5年以内に“800V=標準”になる可能性が高い、とも見られています。

つまるところEVは現時点であっても様々な分野において進化の過程にあり、EVを選ぶ際には、「今のコストパフォーマンス(400V)」か「将来性能(800V)」かを基準に検討するのが最も合理的なのかもしれません(ただ、一般的な消費者は400Vであるのか800Vなのかを気にするとは思えず、単に価格とEV性能を重視するものと思われる)。

L1018942

合わせて読みたい、関連投稿

本家よりカッコいい?“アウディじゃないAUDI”の最新EVが中国で初公開。チャイナスピードによってセダンに続く「最速」発表
本家よりカッコいい?“アウディじゃないAUDI”の最新EVが中国で初公開。「チャイナスピード」によってスポーツバックに続く第二弾「最速」発表

Image:Audi | 「アウディらしくないアウディ」が人気化すれば”逆輸入”もありうる? | ■ AUDI E SUV Conceptとは? アウディが中国向けに作った“リング無し”の新ブランドA ...

続きを見る

ポルシェ量産車史上最強の1156馬力、新型カイエン ターボ エレクトリック正式発表。「ゼロヨン10秒以下」の驚異の加速力
ポルシェ量産車史上最強の1156馬力、新型カイエン ターボ エレクトリック正式発表。「ゼロヨン10秒以下」の驚異の加速力【動画】

Image:Porsche | まさかSUVが「10秒の壁」を破ろうとは | 驚異の1,156馬力と「911ターボSハイブリッド」に匹敵する加速 かつて映画『ワイルド・スピード』でベンチマークとされた ...

続きを見る

フォルクスワーゲンが「中国のために、中国内で」開発した新型EV、ID. Unyx 08を正式発表。これまでのVWとは全く異なるデザインを採用、これが中国専売VWの新しい顔に
フォルクスワーゲンが「中国のために、中国内で」開発した新型EV、ID. Unyx 08を正式発表。これまでのVWとは全く異なるデザインを採用、これが中国専売VWの新しい顔に

Image:Volkswagen | ID. Unyx 08は中国 シャオペン(Xpeng)との共同開発 | エントリーモデルながらも大きな車体がその自慢 フォルクスワーゲンが中国専売となる電動SUV ...

続きを見る

参照:Jalopnik

この記事が気に入ったら
いいね ! しよう

-■そのほか自動車関連/ネタなど■
-, , , , ,