
Image:LOTUS
| なぜロータスはPHEVに賭けるのか? |
かつては「ピュアEV専売ブランドになる」という目標を掲げていたが
EVモデルの販売が期待を大きく下回る現在、ロータスが大規模な戦略転換を迫られています。
軽量スポーツカーを象徴してきたロータスではありますが、Eletre(エレトレ)やEmeya(エメヤ)といった純EVで新たな顧客層を狙ったものの需要は想定ほど伸びず、販売も不調に終わっているという状況(北米にて導入されたトランプ関税の影響も大きい)。
そこで同社が次に選んだのがPHEV(プラグインハイブリッド)を中心とした“再建プラン” です。
実際、欧州ではPHEVの関税がEVより低く、中国生産となったロータスにとっては「PHEVは理にかなった選択」でもあり、さらにPHEVは“EVのように充電環境やバッテリー残量に悩まされない”として高級車市場で人気を取り戻しているという現状も存在し、ロータスもその流れに乗ろうとしているわけですね。
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サマリー
- ロータスが純EV戦略を修正し、PHEV(プラグインハイブリッド)を主軸に再構築
- 第1弾は900Vアーキテクチャ+900ps級の“ハイパーPHEV”SUV
- 欧州ではPHEVのほうが関税が大幅に低く、ロータスにとって生命線
- エミーラもPHEV化予定、2027年には小型PHEVモデルも登場
- EV不振の市場でロータスが生き残るための“唯一の選択肢”
ロータスの新PHEV戦略:詳細と背景
1. 第1弾は900ps級の“ハイパーPHEV SUV”
報道によると、ロータスが最初に世に出すPHEVはエレトレをベースとした新型SUV。
主な特徴は以下のとおりです。
【予想スペック(リーク情報ベース)】
- 電圧:900Vアーキテクチャ
- システム総出力:約900ps
- 後続距離:960km以上
- 足回り:エアサスペンション+アクティブハンドリング
- 発売時期:2026年(中国→欧州の順)
CEOである馮清峰(Feng Qingfeng)氏は、これを「究極のハンドリングを実現するモデル」と説明しています。
2. 欧州市場の“PHEV優遇”が生命線
- 中国で生産されるロータスはEVだと高関税
- しかしPHEVは関税が大幅に低い
→ 欧州市場にて販売を伸ばすにはPHEV化が不可欠
ベントレーやポルシェでもPHEVが販売の柱となっており、その理由としては”ガソリン車のフィーリングを楽しめる””充電をしなくてもEVとしての優遇を受けられる”ことから支持を集めている、とのこと。
3. EV需要が低迷──特にスポーツEVが厳しい
既報の通りスポーツEVの需要は世界的に鈍化しており、車重の問題や価格の上昇、急速充電インフラの遅れなどが主因となってロータスのEVは計画ほど売れておらず、あるいは「壊滅的」とも。
ロータスもその潮流を捉え、PHEVによる“過渡期の現実解” を取ることにした、というのが最新の状況というわけですね(ロータスほど時代の波に翻弄されたスポーツメーカーも少ないであろう)。
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今後のラインナップ:エミーラもPHEV化、2027年には新型小型モデルも
エミーラ(Emira)もPHEVへ
現行の“最後のピュアガソリン・ロータス”であるエミーラもPHEV化される予定だといい、バッテリー容量は未公表ですが、軽量性とのバランスが課題となりそうです。
想定パワートレイン候補
- メルセデスAMG製 2.0L 直4ターボ+PHEV※ロータスのブランド価値を守るためにはこれしかないであろう。加えてメルセデスAMGは4気筒モデルを廃止する計画を表明しているので、4気筒エンジンの開発コストを回収したいはずである
- トヨタ製 3.5L V6(現行エンジン流用の可能性は低い)
- 親会社・吉利(Geely)傘下のボルボが採用する2.0L PHEV(欧米では実績あり)
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2027年:新型“小型PHEVロータス”登場
さらにロータスは2027年までに2つのPHEVを追加投入すると明言。
その中には、さらに小型で軽量なモデルが含まれ、ロータス本来のスポーティな要素を受け継ぐことが期待されていますが、現時点では「どういったモデルになるのか」ナゾのまま。
そして現在の流れを考慮するに、ピュアEVの投入は今後しばらくは「ない」のだと考えられます。
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競合・市場での位置付け
競合はポルシェ、ベントレー、ポールスター
近年、PHEVが最も成功しているのはポルシェ(パナメーラ、カイエン)やベントレー。
ロータスも彼らと同様、“高級車×PHEVが最も売れる”市場特性 を理解した上での戦略変更であると考えてよく、よってライバルと同等、あるいはそれを超えるパフォーマンスを追求することになるのかも。
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Image:Polestar
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結論:PHEVはロータスが生き残る“唯一の現実的な道”
ロータスは長年「軽量スポーツカーを象徴する存在」でしたが、しかし市場の変化、EVの需要鈍化、中国生産車への欧州関税、ブランド再生のプレッシャー──そのすべてがロータスにPHEVへの大転換を迫っています。
PHEV化は妥協ではなく、むしろロータスが本来得意とする“軽さ・運動性能・実用性”を両立させるための現実解であるとも考えられ、2026年以降に登場する新型PHEVがロータスを再び“走りのブランド”へと引き戻すのかどうか、多くのファンが引固唾をのんで見守る状況であるとも考えられます。
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参照:Lotus

















