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フォードCEO「うん無理。トヨタには勝てない」。大衆車市場から撤退し、趣味性の高いクルマに特化する“感情に訴える”新戦略について語る

フォードCEO「うん無理。トヨタには勝てない」。大衆車撤退と“感情に訴える”新戦略について語る

Image:Ford

| フォードCEO、ジム・ファーレイ氏は「思い切った戦略」でも知られる人物である |

今の時代、これくらい「割り切ってないと」生き残れないのかもしれない

この記事のポイント(要約)

  • 「フルラインメーカー」の終焉:フォードはかつての「モデルT」のような、全方位型の大衆車メーカーであることを諦めた
  • コスト競争の限界:トヨタやヒョンデ、キアといったアジア勢に対し、低価格車でのコスト優位性が持てないことを認めた
  • 「感情」と「トラック」へ集中:マスタング、ブロンコ、ラプターといった、熱狂的ファンを持つ高利益率モデルにリソースを全投入
  • 販売台数は減るが収益は改善:台数は全盛期の6割強に落ち込むも、1台あたりの収益性は向上
なぜ「世界五大自動車メーカー」フォードは日本市場から撤退したのか?約100年前にはGMとともに日本市場の95%を支配した歴史を振り返る
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「トヨタには勝てない」CEOが認めた歴史的転換

フォードのジム・ファーレイCEOがアルゼンチンのメディアに対し非常に衝撃的で率直な言葉を口にしたことが明らかになり、それはフォードが長年守り続けてきた「あらゆる人にクルマを届けるフルラインメーカー」としてのアイデンティティを捨てたという宣言。

ファーレイ氏は、かつての看板車種であった「フィエスタ」や「フォーカス」への挑戦を「間違いだったかもしれない」と振り返り、その理由は、あまりにも冷徹なビジネス上の数字にあったことについても言及することに。

フォードCEOが半年間シャオミSU7を運転し、「手放したくない」と語る。「通常は他社製品を褒めないのですが、このクルマは本当に素晴らしいと認めざるをえません」
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なぜフィエスタやフォーカスは消えたのか?

かつてのフォードは、T型フォード以来の「自動車の民主化」を掲げ、安価で信頼性の高い車を大量に売ることを目指していましたが、しかし現代においてその役割を担っているのはフォードではありません。

「フルラインメーカーであることはフォードにとって精神的な指針でしたが、今思えばそれは間違いだったのかもしれません。挑戦したことが間違いなのではなく、私たちのコスト構造がトヨタやヒョンデ、キアと競合できるレベルではなかったということです。最終的に、私たちはブロンコやピックアップトラックへと移行せざるを得ませんでした。」

フォードCEO ジム・ファーレイ

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データで見る:販売台数の減少と戦略の成果

実際のところ、フォードは過去数年で、セダンのフュージョン(かつての日本名モンデオ)やトーラス、そして人気SUVだったエッジやエスケープまでも米国などの主要市場から段階的に撤退させていますが、この「いかに過去に人気があり販売に貢献したとしても、いま利益を稼げないのであれば容赦なく切る」というドライな姿勢はアメリカの企業ならでは。

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フォードのグローバル販売台数の推移

年代年間販売台数(目安)戦略のフェーズ
2013年〜2017年約 630 万台フルラインナップ維持。シェア拡大を重視
2018年約 600 万台ラインナップの見直し開始
2021年約 390 万台半導体不足とラインナップ絞り込みが重なる
2023年〜2025年約 420万 〜 440 万台収益性の高いモデルへ完全にシフト

販売台数こそピーク時の3分の2程度にまで落ち込んでいるものの、フォードの収益構造は改善しおり、安売りで台数を稼ぐのではなく、「高くても欲しい」と言わせる車を売るビジネスモデルへの転換が成功しつつあるというわけですね。

なお、競争が厳しくなる現在の自動車業界において「台数よりも利益」とはどの自動車メーカーも口にしてはいるのですが、これを成功させているというのは特筆すべき点かもしれません。

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アウディ
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結論:フォードが目指す「エモーショナル」な未来

今のフォードが注力しているのは、単なる「移動手段」ではなく、所有することに喜びを感じる「エモーショナルな製品」です。

  • マスタング GTD: フェラーリやポルシェと並ぶパフォーマンス
  • ブロンコ / ブロンコ・ラプター: アドベンチャーとノスタルジーの融合
  • F-150 ラプター R: ピックアップトラック界の絶対的な捕食者
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ファーレイCEOは、アジア勢が得意とする「効率的な移動手段」としての競争からは降り、フォードにしか作れない「物語(ノスタルジー)と興奮」を売るブランドへと再定義を行っており、これは、フォードというアメリカの象徴が生き残るための、現実的かつ大胆な決断であると言えそうです。

大衆車から撤退するという決断は、かつてのファンには寂しく、そしてあまりに大胆で危険な賭けであるかのように映るかもしれません。

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しかし、中国メーカーまでもが低価格EVで攻勢を強める中、コスト構造で勝てない土俵で戦い続けるのは自殺行為だとも考えられ、よって今の自動車業界では「自分たちの強み、そして勝てる要素」を適切に把握し、勝てる土俵で戦う、あるいは独自の市場を作り出すことが唯一の生き残る道であるとも考えられます。

よって、「自分たちが世界で一番得意なことは何か?」を問い直し、マスタングやトラックに絞ったフォードの決断は、他の欧米メーカーにとっても一つの教科書となるのでは、とも考えています。

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さらにフォードは「F1参戦」などモータースポーツへの関与も強めており、ますます「嗜好性や趣味性」を強めているようにも思われますが、実際にフォードに対するユーザーの忠誠心が「向上」しており、はやくも新しい戦略の効果が生まれ始めているようですね。

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参照:LA NACION(YouTube)

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