| GMは以前から状況の変化に対し敏感であり、思い切った戦略を採用することがある |
同じアメリカの「ビッグ3」でも、ここまで対応が分かれるのは興味深い
さて、つい1年半くらい前だと「EVこそが自動車産業の未来」であると誰もが信じて疑わなかったものの、この半年ほどですっかり事情が変わってしまい、”突如”EVの成長が鈍っています。
補足するならば、EV市場そのものは成長しているのですが、そこに参入したブランドそして車種が(EV市場の拡大よりも)圧倒的に多く、よって「1車種当たりの販売」が相対的に少なくなってしまい、場合によってはマイナス成長のように感じられることがあるわけですね。
GMはEVを5万台減産し、自動運転に投資
そしてこういった「EV市場の成長失速」に対しては各社各様の対応を行っており、多くの自動車メーカーが採用するのが「EVへの投資を控え、ガソリン車への再投資を行う」「完全電動化への移行時期を遅らせる」。
一方でホンダのように「完全電動化への移行スケジュールに変更はない」とするメーカーも見られ、あるいはフォードのように「低価格EVを発売しEVの販売を加速させる」というアグレッシブな対応を見せる例も(稀ですが)見られます。
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フォードが中国製EVに対抗するためにテスラやアップルから人材を引き抜き「低価格EVプロジェクト」をスタートさせたとの報道。その成果には期待がかかる
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そして今回報じられているのがGM(ゼネラルモータース)の新しい方針で、報道によると「EVの生産予測を5万台下方修正し、(GMが支援する自動運転事業である)クルーズに8億5000万ドルを投資する」。
つまり、2024年に30万台のEV(電気自動車)を製造するという計画を「25万台」へと修正し、かわりに資金を自動運転へと投資することで収益体制の改善を図るということになりますが、これはテスラと部分的に共通する方針の転換であり、つまり「市販EV市場は簡単に回復しない」「EV市場は中国車に席巻され利益を取れなくなるであろう(そのために別の収益源を見つけなければならない)」という考え方に基づくものだと考えられます(EVに注力し、中国車と戦う構えを見せるフォードとは真逆である)。
2024年のEVの市場浸透率は予想を下回っています。生産目標を定め、それを達成するために盲目的に生産し、市場規模がまだそこまで達していないために何十万台もの在庫を抱えるという状況には陥りたくないのです。この新しい方針は、必要な規模のメリットを実現しつつ、在庫レベルを狂わせて、すでに1台購入した顧客の残存価値が損なわれるほど大幅な値引きを始めなくて済む、非常に良い組み合わせだと考えています。おそらく、2024年だとEVの販売は新車のうちの8%にとどまるでしょう。
GM最高財務責任者 ポール・ジェイコブソン
一方、「EVに対して弱気」「EV事業で損失を出している」と捉えられないようにするためか、同氏は「我が社のEVポートフォリオは依然として堅調であり、今年後半には固定費を除いた(EVの)変動利益がプラスになると予想している」ともコメントしていて、株価と株主に対する配慮も見られます。
ただし「クルーズ」の将来も不透明である
しかしながら「クルーズへの8億5,000万ドルの追加投資」については疑問視する声も多く、というのも昨年秋、クルーズは全国的な事業を一時停止し、つい最近になってようやくフェニックスとダラスで(完全自動運転システムを作動させないまま)にテストを再開したばかりだから。
つまり現時点でこのクルーズの自動運転は「有用」だと認識されているわけではなく、直近においても他社に先んじてこれを事業化し収益をあげることができる目処が立っていないわけですね。
クルーズ担当者はテスト再開と追加投資の発表に際し「クルーズはフェニックス、ダラス、そして現在はヒューストンで手動および人間による監督下でのテストを実施し、無人運転への復帰に向けて前向きな進歩を続けており、モビリティを変革し、道路の安全性を向上させるという共通の使命に対するGMの継続的な支援に感謝しています。GMの8億5000万ドルの資金注入は、当社が自動運転技術を進化させ続ける中で、運用上の資金ニーズを満たすのに役立つでしょう」ともコメントしていますが、GMとしては「たとえクルーズが直近でお金を生み出すことはないにしても」、EVに投資するよりはそちらのほうが分がいい、と判断したということになりそうです。
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参照:Autonews, etc.