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トヨタが「アップルの自動車業化への参入は歓迎、ただし覚悟が必要」と言及。テスラについて語った時のように「なにもわかってない」と批判されそうだ

2021/03/13

| トヨタの言いたいことは理解できるが、そもそもアップルは自動車メーカーになりたいわけではない |

さて、トヨタ自動車の豊田章男社長がアップルの自動車業界参入に言及して話題に。

これは豊田章男社長が3月11日の記者会見で述べたもので、アップルの自動車業界への参入を歓迎しつつも、「車を作るということは技術力があればできるんですけれども、車を作ったあとに40年の、ちゃんとユーザーとかいろんな変化に対する、変化点に対応する覚悟を持っていただきたいと思う」と述べ、その持続性に対する覚悟の必要性を示唆。

なお、トヨタはやはり「ものづくり」からスタートしているので、どうしてもハードウエアに焦点を当てがちですが、アップルはもちろん、テスラなど(自動車業界への)新規参入組はそもそもハードよりもソフトに焦点を当てていて、トヨタとは「見ているもの」が全く違うんじゃないかとも考えています。

ただ、今回のコメントは質疑応答での回答であり予め用意していた発言ではなく、よって今回の発言が必ずしも豊田章男社長の真意を現しているとは考えられず、その言葉の裏にはもっとたくさんの意味が隠されていたのかもしれません。

トヨタとは自動車メーカーだが、アップルやテスラはそうではない

参考までに、豊田章男社長は昨年末に開催した2021年3月期 第2四半期決算説明会において、テスラについて言及し、その際に「テスラのヴィジョンを理解していない」と評されたことも。

このときの骨子としては、トヨタ自動車は(自動車メーカーとしての)リアルな基盤を持ち、生産能力と顧客を有している点でテスラよりも優れている、というものです。※下の動画では32分辺りから

そしてこのとき、豊田章男社長が主にアメリカのメディアから批判されたのが「テスラのことを理解していない」ということ。

それはどういった点においてなのかというと、「そもそもテスラは自動車メーカーを目指しているわけではないのに、自動車メーカーとしての基準をもってテスラを語るのはおかしい」というものです。

なお、トヨタとテスラとはかつて電気自動車開発において提携していたものの現在は提携を解消しており、その理由もこういった「ボタンの掛け違い」にあったのかもしれません。

トヨタとテスラ、アップルとではビジョンが異なる

トヨタのヴィジョンとは、トヨタフィロソフィーにあるとおり、「モビリティを社会の可能性に変える」ということ。

これは先ごろ始動した「ウーヴン・シティ」に代表されるもので、トヨタが「自動車会社からモビリティカンパニーへと変革してゆく」ことにあり、ウーブン・シティでは「パーソナルモビリティ、ロボット、人工知能(AI)技術などをはじめとする様々な領域の新技術をリアルな場で実証」する、としています。

一方、テスラCEO、イーロン・マスク氏は「インターネット」「クリーンエネルギー」「宇宙」分野がが人類に進歩をもたらすと10代の頃から考えていて、実際にペイパルを設立したり、スーペースXにて民間初の国際宇宙ステーション(ISS)とのドッキングを成功させているのは既知の通り。

米経済誌「誰もがテスラの実力を見誤った。リスクを負って世界を変えようとするビジョンを理解できなかったのだ」

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そして「クリーンエネルギー」の分野がテスラに該当するわけですが、イーロン・マスクCEOにとっての目的は自動車メーカーになることではなく、世界で最も環境負荷が高いであろう自動車を”クリーン”にして地球を救うことが目的であり、そのための手段がテスラという自動車なのだと思います。

実際のところ、テスラは家庭用蓄電池「パワーウォール」も発売しており、特に自動車にこだわる様子もなく、もし世界中の自動車メーカーがEVに参入し、自動車が「クリーン」になったならば、あっさりと自動車を捨てて次のヴィジョンへと向かうのかもしれません。

「人々や企業の目をEVに向けさせる」というのがイーロン・マスク氏の目的のひとつであった可能性もないとはいい切れず、トヨタにとって自動車(もしくはそれに変わるモビリティ)は目的そのものではあるが、テスラにとって自動車(EV)は目的ではなく手段に過ぎないのだ、とのくは考えています。

そしてそれはアップルにおいても同様で、アップルにとっての自動車は目的ではなく手段であり、トヨタがアップルの自動車について言及するのは「論点が噛み合わない」議論なのかもしれません。

ちなみに、元GM副社長、ボブ・ラッツ氏(ダッジ・ヴァイパーやカマロなど、数々のマニア受けするクルマを作ってきた)も数年前には「テスラはじき潰れる」と発言したことがあり、これもやはり「モノづくりの観点から、そして自動車メーカーとしての常識から」捉えた発言であったのでしょうね。

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参照:The Wall Street Journal, トヨタ自動車株式会社

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