| クルマの構造が複雑になりデバイスが増えれば増えるほどリコールも増えてゆく |
一方「プログラムの修正で」簡単に対応が可能となったリコールも増加
さて、近年の自動車業界で大きな懸念となっているのがリコールの多さ。
米国道路交通安全局のデータによると、北米における自動車のリコールは2022 年までの10年間において、それまでの10年間の平均と比較して46%増加しているといい、具体的には2022年までの5年間だと毎年平均1,000件以上のリコールが発生し、これは1日当たり約27件という数字です。
一方、2002年までであれば、どの年であってもリコールが年間1,000件を超えたことはなかったとされ、明らかにリコールが増加していることがわかります。
いったいなぜリコールは増加しているのか?
そこで気になるのが「なぜリコールは年々増加しているのか」。
自動車に関する技術は年々進化しているはずですが、なぜかリコールは減るどころか増加の一途を辿っており、その理由は「エレクトロニクスへの依存度が高まっていて、自動車がより複雑になっているから」だと言われています。
まず、データ会社エドマンズの自動車アナリスト、アイヴァン・ドゥルーリー氏が語ったのが「車両がより複雑になればなるほど、より多くの問題が発生するのは間違いありません」。
さらに同氏は「自動運転機能やバックカメラなどのハイテク機能の装備によって、自動車はこれまでに見たことがないほど進歩しているます」とも。
たとえば2023年12月には大規模リコールが相次いでおり、トヨタはエアバッグの誤作動を引き起こす可能性のあるセンサーの不具合で世界中で112万台をリコールしたほか、テスラはオートパイロットシステムの問題で200万台近くの(発売したほぼすべてに該当する)200万台をリコールしたほか、警告灯の文字サイズを理由にさらに220万台のリコールを実施しています。
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ほんの20年前だとエアバッグはまだ普及していなかった
ちなみにですが、20年前だとまだエアバッグがようやく「標準装備化されたばかり」で広く普及しておらず、そしてすべてのクルマにエアバッグが標準されてしばらく経った後に「タカタのエアバッグ問題」が発生していて、この例のように「当時導入された最新の技術や装備が、のちになって(当時は予見できなかった)問題を引き起こす」ことも。
その後にも様々な新技術がクルマに付与されており、ABSやトラクションコントロール、さらにはブラインドスポットモニターや各種アラート機能、様々な部位の不具合を知らせるセンサーの導入、自動運転機能やインフォテイメントシステムなど。
そしてより良い運転体験を提供するためにはこれらの複雑な機器やテクノロジーを連携させ統合するためのプログラムが必要になり、車両にコンポーネントを追加すればするほど、そして車両の技術的重量が増すにつれ、理論的には”故障箇所が増える”ことに。
実際のところ、日々発表されるリコールの内容を見ても、物理的な設計に問題があったり製造上の問題があるという例よりも「制御プログラムに問題がある」という例が非常に多く、そしてリコールの対応については「プログラムの修正で解決」という例がほとんど。
つまり、(感覚的ではありますが)リコールが増加しているといえども、「増加した分、もしくはそれ以上がプログラムに起因するものであって内容が軽微にとどまる」「一方で重大な危険性をもたらす設計や構造、製造上の欠陥」は減少傾向にある」ように思われ、リコールが増加しているとしても、さほど気にする必要はないのかもしれません。※一方、構造や制御が複雑になりすぎて原因を特定できないという例も登場している
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