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欧州(EU)が「中国車が補助金を得て不当に安価にEVを販売している」件に関して調査を行い、最大48.1%に関税を引き上げる意向を固める。このまま進めば7/4には発効

Maxus

| 調査の内容に従い、「補助金の程度」によってメーカーごとに関税が区分けされ、最大では38.1%に |

現在中国と協議中、事態が覆らなければこのまま追加関税が発動する

さて、欧州委員会(EC)がついに「中国のバッテリー電気自動車(BEV)とそのサプライチェーンが不当な補助金の恩恵を受けている」との結論を下し、その結果として「ECは中国製EVに対する暫定輸入関税を、自動車メーカーに応じて17.4%から38.1%の範囲で(現在の10%に加えて)課すことにした」と発表。※つまり合計では27.4%~48.1%となる

ただしこの関税引き上げについては猶予があり、現在欧州委員会は中国当局と連絡を取ったうえでこれらの調査結果について話し合い、問題解決の方法を模索していることについても報じられています。

そして「中国当局との継続的な協議で解決に至らなければ」これらの関税は7月4日に発効することとなりますが、関税は当初、各加盟国の税関が決定する方法で保証され、後に確定関税が課せられた場合にのみ徴収されることとなるもよう。

なお、事前の予想では(追加関税が)10-25%になると言われていたので、今回の決定は予想を超える数値ではありますが、アメリカの課す「100%」の追加関税に比較するとまだまだ「ぬるい」のかもしれません。

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中国車に対する関税はこうやって決定される

今回の新しい関税は「自動車メーカーに応じて」決まることになるとされ、ざっと「欧州委員会の調査には協力したがサンプル調査は実施されていない中国のその他のBEVメーカー」には加重平均関税21%、調査に協力しなかった中国のその他のBEVメーカーには残余関税38.1%が課されるとのこと。

このうち、「欧州委員会の調査には協力したがサンプル調査は実施されていない中国のその他のBEVメーカー」だと愛馳汽車、BMWブリリアンス、長安汽車、奇瑞汽車、東風汽車、FAW、長城汽車(GWM)、江淮汽車、聯合汽車、蔚来汽車、小鵬汽車(Xpeng)があり、これらのメーカーには、現行の10%の輸入関税と合わせて21%の追加関税が課され、つまりは31%ということに。

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なお、テスラも「調査に協力したがサンプル調査は行われていない」ために(追加で)21%の関税を課される可能性があるそうですが、現在”個別調査”を申請しており、よってこの税率が変更される可能性があるとも報じられています。※モデルYは欧州(ベルリン)製であるが、モデル3は中国製である

参考までに、今回の関税引き上げの対象となるメーカー(ブランド)は以下のとおり。

  • MG(SAIC)
  • スマート(Geely)
  • ポールスター(Geely)
  • Ora(GWM)
  • BYD
  • Nio
  • ロータス(Geely)
  • LEVC(Geely)
  • Maxus(SAIC)
  • Aiways
  • Lynk&Co(Geely)
  • Dongfeng
  • Voyah(Dongfeng)
  • Changan
  • Xpeng
  • Zeekr(Geely)

中国国営企業ほど関税が高く設定される

今回の関税は欧州委員会による「中国のバッテリー式電気自動車(BEV)輸入に対する補助金反対調査」によって(暫定的に)決定されたもので、興味深いのは「BYDとそのサプライチェーンが中国政府から最も少ない補助金を受け取っている」とされたこと。※BYDは相当額の補助金を受け取っているというレポートが提出されたことがある

BYD
参考BYDは中国政府から直接補助金として3480億円を受け取っていた。これは収益の3.5%に相当し、さらに間接補助金も。どうりでEVを安く作ることができるわけである

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BYDは極度の垂直統合で知られる民間企業で、可能な限り社内で処理しようとしていることで知られており、たとえば、リチウム鉱山を所有し、独自のバッテリーを製造し、独自の電動モーターを開発し、大型海運会社を所有し、さらには自動車保険会社も所有していることが知られていますが、暫定関税は最も低い17.4%となっていますが、つまりは「補助金は受け取っているものの、企業努力も行っている」という事実が加味されたのかもしれません。

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Image:BYD

吉利グループもBYD同様に民間企業であり、ロータス、ジーカー、ボルボ、ポールスター、Lynk&Co、ロンドン電気自動車会社(LEVC)など12のブランドを持ちますが、やはり中国政府から受け取っている補助金は多くないとさて、今回の調査の結果では「20%の関税が妥当」という結果に。

一方で上海汽車工業(SAIC)は、1955年に設立された中国の4大国有自動車メーカー「ビッグフォー」の中で最大の企業であり、MG、IM、マクサス、ライジングオートなど多数のブランドを所有しており、アメリカのGMとは合弁によって”五菱”ブランドを運営しています。

SAICは今回の調査に参加し、サンプルも提供し調査に協力したものの、国営企業だけあって多くの資金が(政府から)注入されているという判断にて最も高い38.1%の関税を課されています(企業努力ではなく、政府からの補助金を頼りにEVを安く売っているという判断なのだと思われる)。

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参照:CarNewsChina

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