| 最高速の挑戦における重要な要素は「環境」であり、これまでブガッティはライバルに比較し有利な立場を確保していた |
しかし現在ブガッティはVWグループを離脱し、その庇護を受けられなくなっている
さて、ブガッティは先日W16ミストラルにて453.91 km/hという速度を記録し「世界最速のオープンカー」の座を奪還したところですが、今回「最高速挑戦に対する優位性を失った」「それでも(市販車最速の)記録に挑むのでは」という報道。
まず「優位性を失った」ということについて触れてみると、これは今回W16ミストラルの挑戦にて使用した、フォルクスワーゲングループが所有する「エーラ・レッシエンの高速度テスト施設を利用できなくなった」ということ。
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なぜこのコースが最高速挑戦に関係?
さらに「最高速挑戦」の難しさについ説明せねばならず、クルマの性能はさておいて、最高速へのチャレンジにおいて最も困難な要素のひとつは「環境の確保」。
最高速への挑戦は加速競争とは異なりタイヤを保護する必要があり、急加速を避けて「ゆっくりと」加速し最高速に向かうわけですが、ここで必要になるのが「距離」となります。
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ただ、この距離を確保することは公道はもちろん、サーキットであっても非常に難しく、よって空港(それでも十分な長さの滑走路を持つ空港は多くない)を借りる、あるいは長い一本道を持つ一般道を閉鎖して走行することとなりますが、これらはいずれも容易ではなく、実現したとしても当日が強風や悪天候に見舞われればチャレンジを行うことが難しくなってしまいます(そして、そのために行ってきた準備が無意味になる)。
そして一般道の場合、時速400キロ以上で走行しているときに強風にあおられると「何車線分も」車体が横に流れてしまうため、そうとうに幅が広い道が必要であり、当然ながらこういった道路を確保することは現実的ではなく、「狭い」道路でのチャレンジには大きな危険が伴うわけですね。※実際にケーニグセグは道路から外れたことがある
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ただ、フォルクスワーゲングループの有するエーラ・レッシエンにあるテストコースは「最高速を出すために」設計されているので環境と安全性が確保されており、そして使用日程に関しても融通がきくため「非常に理想的な環境」となっていて、これがブガッティの最高速挑戦に関する「最大の武器」であるとも。
しかし現在ブガッティはフォルクスワーゲングループから離脱し「ブガッティ・リマック」という別資本となったため、今後エーラ・レッシエンを使用できないとされています。
よって今後ブガッティは、ケーニグセグやSSC(シェルビー・スーパー・カーズ)、ヘネシーのように一般道を封鎖するか、あるいはケネディ宇宙センターのような巨大な空港の滑走路を借りるという道しかなくなってしまい(あるいはフォルクスワーゲンに頼み込むか)、最高速挑戦に対するハードルが一気に引きあげられてしまうことが考えられます。※ただしリマックの発行済み株式のうち24%がポルシェによって所有されており、よってポルシェがフォルクスワーゲングループに働きかけることも可能である
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現時点では時速500キロに耐えうるタイヤがない
公的な記録が残る「世界で最も速いクルマ」はブガッティ・シロン・スーパースポーツ300+(489km/h)ですが、現在ブガッティは「時速500キロの壁」を突破しようと計画を行っているといい、しかしここで問題となってくるのが「タイヤ」。
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現時点ではこの速度に耐えうるタイヤがなく、シロン発表時にも「交渉値として記された最高速に達するにはタイヤの進化を待たねばならない(タイヤの性能が追いつかず最高速が制限されていた)」とコメントされたことからもその関係性がわかります。
実際のところ、今回W16ミストラルが最高速アタックを行った際にリマックCEO、メイト・リマック氏は(同席した)ミシュランのエンジニアとタイヤに関する話をしていたとも報じられ、その際には「5」がつく最高速、つまり時速500km/hを現実的な速度として達成したいと語っていた、とも。
現時点ではトゥールビヨンの最高速については公表されていないものの、この話を鑑みるに「時速500キロを突破できる性能」を備えていると考えるのが妥当であり、それを可能にするには「タイヤ」、そして「環境」しだいとなりそうです。
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