| ボクはBMWの成功につき「ターゲットごとにデザインを分けている」からだと考える |
一方、メルセデス・ベンツでは「金太郎飴」戦略を採用しており、モデルごとの棲み分けが難しい
さて、ちょっと前の「EV一色」ムードから信じられないくらい蔓延しているのが昨年末からの「EV衰退」ムード。
これを受けてメルセデス・ベンツ、フォルクスワーゲン、フォード、GMなどがEV注力のスタンスを変更しガソリンエンジンの存続やヘイブリッド/PHEV重視政策への転換を相次ぎ発表していますが、ちょっと動きが異なるのがBMWです。
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メルセデス・ベンツが「EV集中」戦略を転換し2030年以降もガソリン車を作り続けるとコメント。「2030年であっても、EV / PHEVの販売比率は50%にとどまるだろう」
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BMWでは「EV好調」
BMWはかなり早い時期からEVを発売してきた自動車メーカーのひとつですが、その(あまり成功しなかったという)教訓からか、ライバルのメルセデス・ベンツ、そしてアウディが「EVへのラインアップ置き換え」を急ぐ中でも独自のスタンスを保持しており、ガソリンエンジンの開発継続、そしてEVにおいても(ノイエクラッセを除いて)コストをかけずにガソリン車と共通のプラットフォームを使用するという戦略を進めています(ある意味ではトヨタのマルチパワートレーン戦略に近く、この先どう転んでもいいように選択肢を多く持っている)。
つまりは「EVのみがその未来である」と信じて疑わなかったライバルとは異なる方針を採用し、「ラインアップの完全EV化」の期限を定めていなかったBMWではありますが、なぜか「主力ではなく、選択肢の一つ」であったEVの販売が好調だと伝えられており、今回もまた同様の報道がなされることに。
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BMWは「電動化一本」ではないにもかかわらずEVの販売が急増して業界最高のEV構成率15%へ。それでも「いつ内燃機関をやめるのか、結論は急がない」
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現在は多くの自動車メーカーがEV販売の減速に慌てているものの、どうやらBMWはその中には含まれず、 一部のライバルは新型EVの導入を遅らせたり、既存EVの販売予測を下方修正したりしている中で、BMWは同社のハイエンドEVが2024年のグループの黒字化に大きな役割を果たすと考えているもよう。
実際のところ、BMWは今年全体の販売が若干増加すると予測しており、EVを含む最も高価なモデルがその一部を担ってくれると予想しており、これは今年のEVとPHEVの販売台数が2023年の数字から伸びる可能性が低いとするメルセデス・ベンツの見解とは対照的です。
BMWの最高経営責任者(CEO)、オリバー・ツィプセ氏は「今年は北米、中国、ヨーロッパの主要地域で若干の販売量の増加を見込んでいます。私たちは、特に上級プレミアムセグメントの電気自動車については非常に楽観的です」と語っていて、これはすでに発売済みのi7とXM、そして発売したばかりのi5の受注が好調であること、BMWグループに属するロールス・ロイスではスペクターが「この先2年の生産分まで」完売していることを受けてのことかもしれません。
BMWはなんとも不思議な自動車メーカーである
なお、BMWはなんとも不思議な自動車メーカーで、上述のように同国のライバルとは異なる戦略を採用していることはもちろん、興味深いのは「BMWでは、酷評されるモデルほど売れる」という摩訶不思議な現象が確認されていること。
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BMWのジャンボキドニー装着車はやはり売れていた。4シリーズはメルセデスとアウディを圧倒し、XMはランボルギーニ・ウルスの販売を上回る
| 4シリーズはBMWで6番目に売れているシリーズに、そしてXMは5番目に売れているMモデルに | 一方、ジャンボキドニー装着車で成功しなかったのは7シリーズである さて、BMWがはじめて「バーチカル ...
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実際に(物議をかもした)ジャンボキドニー、そして酷評の嵐だったXMも販売上では「成功」しており、やはりブーイングの多かった新型7シリーズについても好調だと伝えられています。
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圧倒的じゃないか・・・。BMWでは「ジャンボキドニー」を持つモデルのほうが、そうでないモデルに比較してずっと売れているという事実
| 実際に統計を取ってみると、ジャンボキドニー装着モデルの成長率がモノ凄い | しかもライバルメーカーのクルマをも圧倒、まさに成長の原動力と言っていい さて、近年の自動車デザインにおいて大きな話題とな ...
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BMW自身は「話題(炎上)にならなかったら負け」というくらいの覚悟でそのデザインを行っていることでも知られますが、同時に「どうすれば富裕層の心を動かせるのか」をよく知っており、そのために「アグレッシブなデザインを持つモデル(4シリーズや7シリーズ、XMなど)」と「普通のデザインをもつモデル(3シリーズや5シリーズ)」とを使い分けることができていて、こういった”ターゲットごとにデザインを切り分ける戦略”が奏功しているのかもしれません。
たしかにメルセデス・ベンツ、アウディのデザインは金太郎飴的であり、エントリーモデルと高級プレミアムモデルとの差異が小さく、高額なモデルを購入する理由を探しにくいという事実もあるのだと思われます。
つまり、メルセデス・ベンツ、アウディだと「モデルラインアップ間の区別がつかず」、しかも下位モデルであっても優れた装備を持っているために上位モデルを購入する理由に乏しく、しかしBMWではモデル間の区別が明確で、しかも上位モデルにはV8エンジンが搭載されるなど「そのモデルを積極的に購入すべき理由が明確に示されている」んじゃないかとも考えられるわけですね。
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そしてBMWは「ノイエクラッセ」を発表したところではありますが、こちらもまた特殊な部類のデザインを持っていて、それはある種「自動車を超越している」とも捉えているのですが、やはりBMWが緻密な調査と研究のうえに設定した”ターゲット”にズバリ刺さることになるのかもしれません(ぼくは基本的にBMWの戦略を高く評価し、支持している)。
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