| メルセデス・ベンツのホイールの「進化」は一貫してその機能的理由に基づいていた |
その思想が創業当初から変わっていないことには驚きである
さて、メルセデス・ベンツがそのホイールに関するコンテンツを公開。
たしかにメルセデス・ベンツはこれまでにも様々な特徴的なホイールを発表しており、そのホイールに対する想いを以下のように述べています。
美しい手作りの靴やおしゃれなスニーカーがどんな服装も引き立てるのと同じように、車のホイールは外観の美しさに影響を与えます。機能性とデザインの完璧なバランスにより、ホイールはすべてのメルセデス・ベンツの特徴を洗練し、定義し、視覚的に完璧なものにします。何世紀にもわたり、馬車から自動車まで、ホイールは常に街の風景を特徴づけてきました。そして、この4つの「足」は、所有者の個性を特別な方法で引き出します。
最初のメルセデス・ベンツの車輪は「木製スポーク」だった
メルセデス・ベンツは「自動車を発明した」ことで知られますが、その最初のメルセデス・ベンツに装着されていたのは「木製スポークとスチールリムとを組み合わせた車輪」。※これに先駆けて1886年にはワイヤースポークの特許を取得している
その後1910年代から1930年代のレースシーン、スポーツカーではワイヤーホイールが人気化し、その理由は「木製スポークを採用したホイールよりも50%軽量だったから」。
ちなみにこの時代からすでに鋼板やアルミニウムのカバーが取り付けられた「ディスク ホイール」も登場しており、これを装着したクルマの代表例が200馬力の「ブリッツェン」ベンツ。
1911 年、この車は最高速度228 km/hを記録して史上最速の車となり(当時の飛行機や機関車でさえ追いつくことができなかった)、ブリッツェンベンツは、記録破りの偉業を象徴する世界的な存在となり、今日に至るまで様々な方面において影響力を持ち続ける伝説となっています。
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その後このディスクホイールは「効率的に、そして大量に」生産できるようになったことから市販車にも採用されはじめ、1931年の170サルーンは、このホイールを採用した「最初のクルマ」。
このホイールは細い装飾ラインを持つホイールキャップで飾られており、中央にはメルセデス・ベンツのスリーポインテッドスターが誇らしげに輝くという仕様です。
さらにこのディスクホイールは1950年代初頭にデザインをさらに洗練させ、1954年の「ポントン メルセデス」タイプ220 (W180) 、メルセデス・ベンツ タイプ 300b (W186 III) サルーン(アデナウアー メルセデス)へと採用され、1960年代になるとメルセデス・ベンツ600プルマン (W100) にもこの鋼板ホイールが採用されます。
一方、同じディスクホイールであっても300 SL「ガルウィング」クーペに採用されたのはスチール製ではなくメルセデス・ベンツ初の「(軽量素材との)複合ホイール」。※これと前後し、ディスク周辺に細長い穴が設けられるようになっている
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メルセデス・ベンツ300SL「ガルウイング」はこうして誕生し伝説となった。このクルマがなければ今日のメルセデス・ベンツはまた違った捉えられ方をされていたのかも
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その後ディスク上の「スリット」はさらに小さく、そしてその数が増え・・・。
15穴となって1980年代にはフルサーフェスへと変化し「当時最もダイナミックなメルセデス・ベンツであった」190E 2.3-16 を含む190シリーズに採用され、500SELにも採用が拡大されます。
その後1990年代に入って登場したのが190 E 2.5-16に採用された「EVO II」ホイール。
これはモータースポーツから直接生まれたという背景もあって、今日でもカルト的な地位を誇っていますが、多くのレンダリングアーティストが好むモチーフでもありますね。
近年のメルセデス・ベンツのホイールトレンドは「エレクトリックモデルに求められる課題の解決」によって先導されている
そして近代のメルセデス・ベンツのホイールにおけるトレンドは「ピュアエレクトリックモデルから生じている」といい、これらのモデルは効率と航続距離だけでなく、見た目にも優れ、空気力学的にも最適化されたホイールが必要となるため、エアロスキンと呼ばれる空力的に必要な”可能な限り閉じた”表面を持つことになるのですが、そうなると見た目が重くなってしまい、この改題を解決すべく登場したのが「高光沢切削技術」であり、これによって「すっきり」とホイールを見せることが可能となるわけですね。
さらには「ホイール表面を閉じると重量が重くなってしまう」という問題を解決するために考案されたプラスチックカバーはEQSにて初登場。
そしてメルセデス・ベンツのホイールが”今後”向かう方向性はコンセプトカーに見て取ることができ、ヴィジョンEQXXだと(モーターのコイルをイメージした)ローズゴールドのアクセントが付与された半透明のダブルスポークデザイン。
これは軽量な鍛造マグネシウム製だとされ、これまでマグネシウムはモータースポーツ、あるいは一部のスポーツカーにしか使用されていなかったものの、EQXXはこの軽量なホイールを使用することで航続距離を伸ばており、1回の充電で1,200キロメートル以上走行できるという記録を達成しているわけですね。
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さらにヴィジョン「ワン・イレブン」ではエレクトリックモーターのコイルを彷彿とさせる高度に構造化された要素を持っていて、さらに現代における「エレクトリックカー」の存在を強調することとなりますが、この傾向を見るに、これからのメルセデス・ベンツのホイールデザインは「表面が閉じた」ものへとますます移行してゆくであろうことは間違いなく、そしてこの傾向が110年も前に始まっていたということには驚かされます。
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参照:Mercedes-Benz