| もうスタイリッシュなだけじゃ生き残っていけない |
さて、ベストカーWEB報じるところではトヨタ・ハリアーがフルモデルチェンジを受ける、との報道。
2020年5月にもニューモデルが登場するという報道ですが、ハリアーほど数奇な運命をたどったクルマもそうないだろう、と考えています。
まず、トヨタ・ハリアーは1997年に登場していますが、これは国産初の高級SUVと言って良さそう。
トヨタは基本的に「他社がヒットさせたクルマの後を追う」傾向があるものの、ハリアーに関しては「カテゴリそのものを作り上げた」先駆者であったと認識しています。
ハリアーの持ち味は「他社にはない都会的な雰囲気」
ちなみに初代ハリアーのプラットフォームは当時のカムリのものを流用していて、「ガチのオフローダー」ではなく「乗り心地の良いクロスオーバー」として売り出しています。
なお、採用されたイメージキャラクターは「フォーマルスーツを着たライオン」。
そしてちょっと面白いのは、ハリアーのフロントグリルにあるエンブレムはライオンではなく「鷹(チュウヒ)」 。
この理由は定かではないものの、もともとハリアーは「鷹」のイメージで開発され、その後プロモーション部隊にハリアーを手渡した際に後付けで「ライオン」になったのかも。
参考までに、ホンダ・オデッセイの開発イメージは「黒豹」だとされるものの、それはプロモーションにおいて用いられることはなく、ジムニーの開発イメージ「サイ」も同様(こちらはオプションに一部サイが登場)。
このあたり、大きな会社ならではの「意思の疎通の問題」を感じないでもないですが、とにかくぼくはハリアー=鷹ではなく、ハリアー=ライオンといったイメージを持っています。
それはさておき二代目(2003~2013年)、現行三代目(2013年~)ハリアーも”スタイリッシュな都会派高級クロスオーバー”という、キープコンセプトにて登場。
この三代目ハリアーは独自のコンセプトが周知されていたために競合といえるがおらず、発売後しばらく経過しても上位をキープしていたのは記憶に新しいところ。
ハリアーの持ち味が「飽きられている」?
ただ、そのハリアーについてもC-HRや現行RAV4に押される形で徐々に販売を落としており(マツダCX-5に流れた層もあるかもしれない)、そのプレゼンスを失っているのもまた事実。
さらには最近の日本国内における自動車登録状況を見てみるといくつかの傾向があって、まず「SUVにおいては、RAV4やライズ、ロッキーのような、(スタイリッシュなものよりも)ワイルドなデザインの方が人気がある」。
これは、ほぼ時を同じくして投入された「ホンダCR-VとトヨタRAV4」について、CR-Vは都会的RAV4はアウトドア風味」という差異があり、その販売については「アウトドア風味の圧勝」。
こういった事例を見ても、ハリアーの”都会的”という持ち味が少々飽きられているということは否めないと考えていますが、そこで気になるのが4代目ハリアーはどうなるのか、ということ。
ベストカーWEBでは「RAV4と共通のプラットフォーム採用」「サイズと高級感アップで上級移行」「7人乗りも追加」「エンジン、駆動方式の組み合わせ選択肢が増える」「価格は350万円~550万円くらい」と見ており、RAV4との棲み分けが最大の課題である、とも。
なお、RAV4はTNGA思想による「GA-K」プラットフォームを採用し、エンジン含むパワートレーンもひっくるめた「フルTNGA」。
新型ハリアーもプラットフォームはじめドライブトレーンもRAV4と共通とされる可能性が高いものの、RAV4にはない7人乗りに対応するため、ホイールベースの延長がなされる可能性が大。
ハリアーは今こそ「新しい路線」にシフトすべき
そしてぼくが思うのは、ハリアーはこれまでの路線から、新しい路線にシフトすべきだということ。
ハリアーは「高級クロスオーバー」という道を切り開いた先駆者ではあるものの、現在そこには多くのフォロワーが入ってきており、その競合はマツダや輸入SUVといったところ、レクサスにまで拡大していて、その中で存在感を発揮するのは至難のワザです(そして、そこに固執するべきでもない)。
なお、上の方で「国産車の販売トレンド」について触れましたが、「ワイルドなSUV人気」に加えてのトレンドが「フロントすべてを覆うほどの巨大グリル」。
これはアルファードとノアにおいて顕著で、アルファード、ノアはヴェルファイア、そしてヴォクシー/エスクァイアに比較して販売が上位。
共通するのは「フロントグリルの総面積がデカイ」ということで、たとえばノアはセンターグリルだけだとエスクァイアにその大きさで劣るものの、「サイドグリル」まで含めると視覚的にはエスクァイアを逆転すると捉えています。※デリカD:5も同様にデカいグリル採用が受けている
そしてレクサスにおいても、(見た感じで)前面におけるスピンドルグリル比率がもっとも大きいUXが「いちばん売れているレクサス(価格的な魅力もありますが)」。
2019年12月、そして通年での国産メーカー登録状況!ベスト15のうち12台がトヨタ。とにかくトヨタトヨタトヨタ
つまり、日本においては、より面積の大きなグリルを持つクルマの人気が高いと思われ、よってハリアーも「ヘッドライトを除くと全部グリル」くらいの勢いを持つデザインを与えたらいいんじゃないかと考えるわけですね。
これによってスマートなマツダCX-5/CX-8、アクティブなRAV4、高級感のあるレクサスとも差別化ができ、「とにかく押しの強い」、そしてマイルドヤンキーに受けるであろうクルマのできあがり。
よって、新型ハリアーは従来の高級路線に加え、「インパクト」という現代に不可欠な要素を盛り込み、「アルファードのSUV版」とも言えるような、トヨタにしかできないであろう強い押し出しを持ったクルマへと変化させるべきなのかもしれません。