>テスラ(TESLA)

ガソリン価格上昇によってテスラの受注が「地域によって」前年比2倍に増加!ただしニッケル価格の高騰にて最大1000ドル値上げされるなど大きな混乱を呼ぶことに

2022/03/14

ガソリン価格上昇によってテスラの受注が「地域によって」前年比2倍に増加!ただしニッケル価格の高騰にて最大1000ドル値上げされるなど大きな混乱を呼ぶことに

| 電気自動車は地球の資源を食い尽くしてしまう乗り物のように思えてきた |

このままEVが普及すると、ニッケルは2024年に供給が足りなくなるらしい

さて、ガソリン価格がかつてないほどの速度で急騰しており、そのために多くの人がEVの購入を検討していると報じられていますが、かつての湾岸戦争時に原油価格が高騰した際には一気にハイブリッド車の普及が進み、同時にSUVの販売が大きく落ち込むこととなっていて(その後原油価格が下がってSUVブームがやってきた)、歴史が繰り返されるのならば、この機会にEVの普及が一気に進む可能性も。

実際のところその兆候はすでに現れており、2022年1月のプレミアムカーセグメントにおいてテスラはBMWを抜き去って首位に立ち、前年比での伸び率は49%。

BMWが+8%、レクサスが-6%、メルセデス・ベンツが-20%という現実を考慮するにテスラの伸び率は「異常」といえるかもしれません。

テスラ
テスラが2022年1月の北米市場でBMWを抜き「もっとも売れたプレミアムカーメーカー」に。数年前まではBMWと並ぶどころか「潰れる」ほうが現実的だったメーカーとは思えない

| 誰もテスラがここまで伸びるとは夢にも思わなかっただろう | やはりリスクを負って世の中を変えようとした先駆者には相応のリターンがあるようだ さて、2021年通年での北米における自動車(プレミアムカ ...

続きを見る

地域によってはテスラの受注が2倍に

そして報道によるとテスラの受注は「ガソリン価格の高等が著しい」地域では2倍にも伸びているといい、これはテスラにとって大きな追い風だとも言えそうです。

もちろん他社のEVを揃えるものの、「発表したけど発売は2年先」といったものも少なくなく、中には価格すら公表されていないEVも(トヨタbZ-4Xも結局のところいつ納車がはじまるのかわからない)。

そこへ行くとテスラはすでに発売もなされ、納車も進んでおり、かつ知名度もあってネットで注文できるという手軽さもあるためか大きく販売が伸びているようですね。

なお、既存自動車メーカーだと、仮にEVの販売が伸びたとして「ガソリン車の販売が減る」ことになり、利益としては(EV増とガソリン車減が同数の場合)EVのほうが利益が低い分、トータルとしては「マイナス」になるのかも。

ただしテスラは「失うもの」がなく、かつ現在は「カリフォルニア(フリーモント)と中国(上海)」の2工場のみで現在の数字を達成しており、これからドイツ(ベルリン)、テキサス工場の稼働が開始すること、中国の上海工場の拡張があることを考慮すると、他社を尻目に大きく販売を伸ばすんじゃないかと考えています。

VW幹部「ID.6は現時点では利益が出ていない。それは認めよう」
VW幹部「ID.6は現時点では利益が出ていない。それは認めよう」。生産効率やパーツ価格が現時点では低く、生産台数増加が必須

| ただし生産台数を増やせば増やすほどバッテリー価格が上がってしまうというジレンマも | フォルクスワーゲンはエレクトリックモデル「ID.4」を発売し納車を開始したところですが、その価格(約430万円 ...

続きを見る

テスラはガッツリと値上げ中

なお、テスラはしょっちゅう値上げを行うことでも知られますが、それも「値上げしても売れる」という状況に基づいているからだと考えてよく、実際に現在「どんどん納車までの時間が長くなっている」とも。

テスラが自動運転機能を米にて1万ドルから1万2000ドルに値上げ!なお日本では87万円のオプション設定
テスラが自動運転機能を米にて1万ドルから1万2000ドルに値上げ!なお日本では87万円のオプション設定

| 現在のテスラの自動運転機能は「レベル2」にとどまり、むしろホンダやメルセデス・ベンツに劣るという意見も | ただし2022年には大幅アップデートも見込まれる さて、テスラの人気オプション、フルセル ...

続きを見る

そして今回も、アメリカ本国にてモデル3ロングレンジとモデルYロングレンジの価格がそれぞれ1000ドル値上げされていますが、これは「ニッケルの価格が高騰しているから」だと報じられています。

これについてテスラからの公式発表があったわけではなく、しかし「ロングレンジ」に使用されるバッテリーにはニッケルが使用されており、しかしロングレンジよりも下のグレードに積まれるバッテリーにはニッケルを使用しない「LFP(リチウム-鉄-リン酸)バッテリーケミストリー」を採用しているためにニッケル価格高騰の影響を受けず、よって値上げがされていないと言われることからも「ニッケル価格の高騰が値上げの理由」というのは非常に納得性が高い推測だと思います。

この値上げによって、2021年はじめには48000ドルだったモデル3ロングレンジの価格が現在では51999ドルとなっており、今後さらにこの傾向が加速する可能性もありそうですね。

テスラ・モデルX

なぜニッケルの価格が高騰?

そしてなぜニッケルの価格があがっているのかということですが、これは「ロシアによるウクライナへの侵攻」がその原因。

ロシアはニッケルとパラジウムを多く産出しており、戦争によって出荷がストップしていることから価格が高騰し、ニッケルの価格は直近の48時間でなんと250%も上昇することに(ロンドン金属取引所では取引が中止になった)。※ロシアはニッケル生産の17%のシェアがある。ニッケル輸出は経済制裁の対象ではないが今後輸出が減少する可能性が大

そしてモルガン・スタンレーの自動車アナリストによると「現在のニッケル価格上昇は米国における平均的なEVの投入コストの約1,000ドルに相当」とコメントしているので、これはテスラの値上げ幅とも一致します(ただし、そこからさらにニッケルは価格を上げている)。

参考までにですが、この「電気自動車のコスト上昇」によって電気自動車の普及が遅れるというレポートもあり、しかし今のところは「ガソリン価格の上昇のほうが直接のダメージとなって家計に響く」ためか、むしろ(上述の通り)EVの販売は加速ぎみ。

ただし一部の調査によると、このままEVが普及すれば、2024年にはニッケルの需要が供給量を上回るとされており、そうなると当然バッテリー価格は上昇することになりますが、価格よりも先に「EVは地球の資源を食い尽くす」可能性があるというのが恐ろしいところ(もちろんニッケルフリーのバッテリーも出てくると思うが、それもまたなんらかの別の資源を使用することになる)。

最近では急激なEVの普及に警鐘をならす人や団体が増えてきていて、やはりその主張のとおり、EVはインフラ、そしてバッテリーの再利用など、下地を整えてから「自然に」普及させるべきなのかもしれませんね。

もうひとつ参考までに、パラジウムはガソリン車に不可欠な触媒を製造するのに必要で、さらにウクライナはマイクロチップの製造にかかせない「ネオンガス」の70%を産出しているため、今回の戦争が現在のチップ不足、ガソリン車の価格高騰に拍車をかけることは間違いないものと思われます。

ポルシェ
ウクライナ情勢に関連しポルシェ全モデルの生産が停止するとの報道。なおウクライナはチップの製造に必要なネオンの70%、ロシアは触媒に用いるパラジウムの40%を産出

| 販売のみではなく、確実に自動車産業の生産現場にまでダメージが及びそう | おそらくは自動車以外の家電やゲーム機の生産にも影響が出るのは間違いはない さて、ポルシェ内部にて共有されたメモとされる文書 ...

続きを見る

合わせて読みたい、テスラ関連投稿

テスラ
中国のテスラオーナーが「バグによって」充電料金として7000万円を請求されるという事態が発生!一方ウクライナではテスラが充電器を無料開放し、現地テスラオーナーが車両を「家」として提供

| 災害時においては電気自動車が有用だとは言われるが | テスラオーナー同士の絆も強かった さて、テスラオーナーはテスラ専用の高電圧充電ネットワーク「スーパーチャージャー」を利用できますが、中国のテス ...

続きを見る

新車のテスラ・モデルX納車直前に「前後タイヤの銘柄がバラバラ」なことが発覚!オーナーは断固納車を拒否し、ネットでは「支持派」と「それはゆきすぎ派」とに意見が分かれる
新車のテスラ・モデルX納車直前に「前後タイヤの銘柄がバラバラ」なことが発覚!オーナーは断固納車を拒否し、ネットでは「支持派」と「それはゆきすぎ派」とに意見が分かれる

| テスラはその場で後日のタイヤ交換を提案。ボクだったら、あとで新品のタイヤが手に入ってラッキーくらいに思うかも | テスラの品質はなにかと問題になることが多いようだが さて、何かとその品質について議 ...

続きを見る

参照:Electrek, InsideEVs, CNBC

この記事が気に入ったら
いいね ! しよう

->テスラ(TESLA)
-, , , , , ,