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まさに破壊的スピード。シャオミのEVが参入からわずか19ヶ月で50万台突破、今後は世界に進出し猛威を振るう予感

シャオミが全固体電池(ソリッドステートバッテリー)の課題を解決する特許を出願。明確なブレイクスルーを示し実用化に王手か
Xiaomi

| EV市場の風雲児、シャオミが打ち立てた新記録 |

当初、誰もがシャオミの成功を疑い、CEOの発言を信じるものはいなかったが

スマートフォン・家電の世界大手であるXiaomi(シャオミ)。

電気自動車業界に参入したのはわずか19ヶ月前のことですが、今回累計販売台数50万台を突破するという驚異的なマイルストーンを達成したことが明らかに。

特に2025年11月の納車台数は4万台を超え、すでに今年の年間目標である35万台を大幅に上回っています。

この記録的なスピード、そしてEV事業の四半期売上が41億ドル(約6,300億円)に達したという事実は「シャオミが単なる家電メーカーではなく、世界の自動車業界における破壊的な新勢力」として確立されたことを示しており、ここではこの驚異的な成長の背景にある戦略的な製品展開、”世界で最も売れたクルマ”であるテスラ モデルYすらも凌駕した販売力、そして独自の強みを考察したいを思います。

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Xiaomi

要約:Xiaomi EVの圧倒的な成功

  • 納車スピード: わずか19ヶ月で累計50万台を達成し、2025年年間目標(35万台)を大幅に超える
  • 売上貢献: 2025年第3四半期のEV事業売上は41.0億USDを計上し、グループ全体の収益増を牽引
  • テスラ超え: 主力SUVのYU7が、2025年10月の中国国内での納車台数にてテスラ Model Yを初めて上回った
  • 強み: 自社製ソフトウェアと消費者向け電子機器との統合により、特に若年層の顧客に強くアピール

詳細:驚異的な販売と収益の成長

① 圧倒的な納車台数と目標の上方修正

シャオミは2024年4月3日に最初の納車を開始して以来、異例のペースで販売を伸ばしており、主力セダンであるSU7(2024年3月発売)とSUVであるYU7(2024年6月発売)の二枚看板による生産体制がフル稼働(二交代制)。

年間生産能力はじつに35万台以上を誇ります。

指標数値特記事項
累計納車台数500,000台以上19ヶ月での達成という驚異的なスピード
2025年11月納車40,000台超月間4万台を超える高い生産能力を確立
2025年 年間目標350,000台 → 400,000台超既に目標を達成し、さらなる上方修正を発表

② 収益構造への貢献:グループ成長の核に

Xiaomiグループが発表した2025年第3四半期決算は、EV事業の貢献度の高さを明確に示しています。

EV事業が総売上の大きな割合を占め(EVの販売単価はシャオミの既存製品に比較すると著しく高い)、グループ全体の売上を22.3%増、純利益を80.9%増という大幅な成長へと押し上げており、”EV事業への進出に難色を示していた”株主たちの事前の心配をみごと払拭したといえそうですね。

財務指標(2025年Q3)数値対前年増減
総売上高160億USD (1,131億元)+22.3%
調整後純利益16.0億USD (113億元)+80.9%
EV等イノベーション事業売上41.0億USD (290億元)N/A (新規事業)
研究開発費 (R&D)12.9億USD (91億元)成長に向けた積極投資

③ YU7、テスラ モデル Yを「国内で」凌駕

シャオミの成功を最も象徴するのがテスラ モデルYを明確な競合と定めた電動クロスオーバー「YU7」の販売実績。

  • 2025年10月卸売台数:
    • Xiaomi YU7: 33,662台
    • テスラ Model Y(国内納車): 約26,100台

中国乗用車協会(CPCA)のデータによると、YU7は10月の国内納車台数でテスラ Model Yを初めて上回り、中型ピュアEV SUVのベストセラーモデルの一つとなっており、これによってYU7の累計販売台数は7万台を突破することに。

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改善する納車待ち期間とグローバル戦略

納車待ち時間は大幅短縮へ

さらに今回の成功に直結しているのは「生産能力の向上」。

以前はYU7の納車待ちが最長62週間に達するなど初期の生産能力の制約が課題となっていたものの、現在では増産体制により待ち時間が大幅に短縮されています(この生産体制の強化については、シャオミが既存事業で培ったノウハウを反映させている可能性が高い)。

加えて、この生産体制の強化は市場の需要に迅速に応えるというシャオミの能力の高さ、企業としての優れた柔軟性を証明する事例の一つとして捉えられています。

モデル以前の最長待ち時間現在の待ち時間
YU7 SUV62週間32〜38週間
SU7 セダン-6〜31週間
SU7 Ultra (高性能)-6〜9週間
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グローバル展開:欧州市場への挑戦

そしてシャオミの勢いは衰える気配がなく、シャオミは2027年に国際販売を開始して当初はヨーロッパに焦点を当てる計画を発表ずみ。

すでにドイツではSU7 ウルトラのテストドライブを実施するなど海外展開に向けた準備を本格化させています。

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ただ、シャオミの成功は「生産能力」のみによるものではなく、そもそもの商品力の高さやベースとなる認知度(中国ではシャオミ製品がない家庭はまずないとされる)、さらには巧みなプロモーションも無視できない要因です。

実際のところアナリストは、シャオミのソフトウェア統合技術と消費者向け電子機器システムをEVへとシームレスに組み込む能力が「特に技術に敏感な若年層の顧客に強力にアピールしている」と指摘しており、「スマートフォンメーカーならではの強み」が、国際市場でも大きな武器となるのかもしれません。

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EV業界へと参入した際には「スマホメーカーがクルマを作るのか」とバカにされたものですが、いまやEVはソフトウエアによって定義される「家電」、そしてタイヤと座席がついたスマートフォンであると認識されており、今後は自動車メーカーよりも「家電メーカー」のほうがクルマづくりにおいて優位に立つ時代が来るものと思われます。

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結論:「テスラキラー」を超えた破壊者の誕生

シャオミの自動車部門、シャオミオートによる「19ヶ月での50万台達成と、EV事業の驚異的な収益貢献」は、彼らがEV市場の単なる参入者ではなく、既存の市場構造を破壊する存在であることを示すひとつの例。

特に、主力モデル”YU7”が中国国内でテスラ Model Yの納車台数を上回ったという事実は、シャオミのEVが価格競争力とデジタル技術の統合において中国市場での消費者の心を掴んだことを裏付けており、彼らはスマートフォンで培ったノウハウを活かして「クルマを究極のスマートデバイス」へと進化させたことを示しています。

こういった現実を踏まえると、シャオミがグローバル市場に進出する2027年以降、世界のEV市場における競争がさらに激化することはまちがいなく、テスラのみならず、多くの既存自動車メーカーにとっての脅威となりそうですね。

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なお、ぼくとしては「中国の自動車メーカーが作るEV」に手を出そうとは思いませんが、「シャオミが作るEV」であれば「買ってみようかな」という気も起きていて、つまるところこれがシャオミの持つ「ブランドイメージ」なのかもしれません(製品の購買活動においてブランドイメージは本当に重要である)。

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参照:CarNewsChina

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