| 現時点ではテスラは「シェアを奪われる側」となっているが |
時代は常に流動的である
さて、様々な機関により、様々な角度から報じられる「EV市場の成長鈍化」。
こういった報道を受け、世間一般では「EVはオワコン」という風潮が漂っているようではありますが、事実としては「成長速度が鈍化したといえど、いまだEV市場の成長は続いており、その成長率は自動車業界の成長よりも大きい」というものがあります。
よってまだまだEV市場は成長路線にあることはまちがいなく、しかしその速度が鈍っていて、それでも自動車業界全体よりは大きく成長しているというのが事実かと思います。
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テスラは今でもトップランナーではあるが、徐々にそのシェアを失っている
S&P グローバル・モビリティが発表した新規登録データによると、3月のバッテリー電気自動車(BEV)の米国における登録台数は96,385台で、前年比3.8%増となっています。
新規BEV登録は市場全体の7.1%を占め、2023年3月の6.8%からシェアを増加させたということになり、これはEVへと投資してきた各自動車メーカーが期待していたほどの急速な成長ではないものの、確実にEV市場が成長しているということを意味します。
そこでテスラについて触れてみると、販売が低迷しているといえど、3月においては50,474台という驚異的な登録台数によってチャートを独占しており、しかしこれは前年同月比で12%減(その前の2月は前年比で25%減っている)。
そして2024年3月時点のテスラの(EV市場における)シェアは52.4%という圧倒的なもので、しかし4年前の2020年のシェアが80%であったことを考慮するとやはりテスラがシェアを失いつつあることもわかりますね。
S&P グローバル モビリティの業界分析担当アソシエイト ディレクター、トム・リビー氏によれば「EVを発売するブランドは他にもたくさんあり、彼らはここにきて競争力を身に着けています。テスラがEV市場の80%を占めていたとき、それは長くは続かないというのが一般的な考え方でした」。
そして今は当時の予測のとおりになったとも考えられますが、それでもテスラは約半数のシェアを占めており、これは予想外の健闘と言えるかもしれません。
実際のところ、ぼくも「テスラの天下は2021年までであろう」と踏んでおり、実際にテスラは徐々にそのシェアを失いつつも「健闘している」というのが偽らざる心境です。
加えて、年初から30%ほど下落したといえど、昨年末からこれほどまでに悪いニュースが出続けているにもかかわらず、テスラの株価はそこから下がる気配を見せず、つまり株式市場はいまでもテスラに高い期待を持たせているということに。
そしてテスラの健闘ぶりはシェアのみならず台数にも現れており、テスラの50,474台に対し2位のフォード は8,418台、次いでヒュンダイは5,686台、そしてBMW は4,246台、起亜3,800台という順となっており、テスラのシェアは50%ではあるものの、残りの50%は「その他大勢」で構成されていて、テスラがシェア以上の強さを持つということもわかりますね。
果たしてテスラはここからシェアを回復できるのか
なお、減少し続けるテスラのシェアの原因となっているのは意外なことに最も安価なモデル3。
昨年に実施したフェイスリフトによって魅力を大きく向上させているものの、モデル3の登録台数は2023年3月と比較して61%減少し、5か月連続で減少が記録されています。※この理由としては、北米市場において7,500ドルの税額控除を失ったことと関係があると推測されている
前出のトム・リビー氏によると「テスラの数字を除外すると、2月と3月はどちらもEVにとって好調でしたが、テスラのこの状況によってEV市場全体の成長が低く現れています」。
つまりEV市場の成長は継続されており、しかしこの成長率は各自動車メーカーの「期待したほど」ではなく、よって多くの自動車メーカーが電動化計画を変更し、たとえばゼネラルモーターズは2027年まで(EVよりも)新しいプラグインハイブリッドを導入する計画を重視すると述べ、メルセデスベンツ、起亜、ヒュンダイ、ランドローバーはいずれも、より幅広い顧客層に対応するためにハイブリッド車とPHEVを拡充する方針へと動いています。
よって、ここからは(今までの1−2年とは異なり)市場へと魅力的なEVがさほど出てこないかもしれず、そうなるとテスラが再びEV市場にて輝きを取り戻す可能性が見えてくるのかもしれません。
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