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【革命】全固体電池の実用化が目前に。動作圧力を「100MPaから5MPa」へ激減させた中国チームの技術的ブレイクスルー

| 実用化できそうでなかなか実用化できない、それが全固体電池(ソリッドステートバッテリー)である |

この記事の要点まとめ

  • 動作圧力の劇的低減: 従来100MPa(メガパスカル)以上必要だった圧力を、わずか5MPaに低減
  • 低コストな新素材: 希少な硫化物ではなく、安価な塩化物系材料を採用し、コストを従来の5%以下に
  • 製造プロセスの革新: 柔らかい素材特性を活かし、現行のバッテリー工場(ロール・ツー・ロール方式)での製造も可能に
  • 高い性能と安定性: 室温で高いイオン伝導性を発揮し、数百回の充放電サイクル後も安定

EVの未来を左右すると言われる「全固体電池(ソリッドステートバッテリー)」。

高い安全性とエネルギー密度を誇りながらも、最大の問題は「動作させるために巨大な圧力でプレスし続けなければならない」という点です。

しかし、2026年1月、中国科学技術大学の研究チームがこの問題を解決する「柔らかい新電解質」を発表し、実用化へのカウントダウンが始まったとして注目を集めています。

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※画像はイメージ

中国車
ソリッドステートバッテリー量産に遅れ?専門家が語る「現実的な課題」と今後の展望。もはや全固体電池の必要性が薄れているという指摘も

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全固体電池を阻んでいた「物理的な壁」

全固体電池は、その名の通り中身がすべて「固形」です。

そのため充放電による電極の膨張・収縮によって電解質との間に隙間ができてしまい、電気が流れなくなるという課題があったわけですね。

そしてこの壁は「実用化に向けた最後の課題」と言われながらもこれまでクリアすることが非常に難しく、よって多くの電池メーカーが「あと一歩」まで迫りながらも実用化ができなかったというのがこれまでの状況です。

そして今までの技術だと、この隙間を無理やり押しつぶすために100MPa以上(1平方メートルあたり約1万トンの重さに相当)という、ラボ以外では不可能なほどの高圧をかける必要があったとされています。

シャオミが全固体電池(ソリッドステートバッテリー)の課題を解決する特許を出願。明確なブレイクスルーを示し実用化に王手か
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新素材「LZACO」の驚愕スペック

今回、馬成(Ma Cheng)教授率いるチームが開発した新素材はリチウム、ジルコニウム、アルミニウム、塩素、酸素を組み合わせた「無機固体電解質」であり、以下のような特徴を持っています。

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テスラ
【いったいいつ登場?】全固体電池がEVの未来を変える?|仕組み・メリット・課題を徹底解説

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新型固体電解質の比較スペック表

項目従来の主流(硫化物系等)今回の新素材 (LZACO)
必要動作圧力100 MPa 以上5 MPa (約1/20に低減)
ヤング率(剛性)100 % (基準)25 % 未満 (非常に柔軟)
硬度100 % (基準)10 % 未満 (変形しやすい)
材料コスト100 % (高価な硫化リチウム等)5 % 未満 (約43.7ドル/L)
イオン伝導性実用レベル2 mS/cm 以上 (実用レベル以上)

なぜこの発見が「ゲームチェンジャー」なのか?

1. バッテリーパックの「簡素化」と「軽量化」

5MPaという圧力は、現行のバッテリーパックでも十分に制御可能な範囲であり、これまで必要だった巨大なプレス用のボルトや補強フレームが不要になり、車体全体の軽量化と航続距離の向上に直結します。

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BYD
ソリッドステートバッテリー(全固体電池)でも中国が独走?チェリーに続きBYDが「2027年から市販車に搭載」と発表

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2. 現行の生産ラインを流用可能

この新素材は「柔らかい粉末」の性質を持つため、既存の液体リチウムイオン電池の製造で使われている「ロール・ツー・ロール(回転するローラーで薄く伸ばす工程)」にそのまま対応が可能。

膨大な設備投資を抑えられる点は、自動車メーカーにとって最大の魅力にもなります。

3. 圧倒的な低コスト

高価な原料を必要とした従来の硫化物系に対し、今回の素材は「四塩化ジルコニウム」を主原料としており、研究チームの試算では、コストは従来の5%以下。

高級車だけでなく、大衆車にも全固体電池が載る未来が見えており、ここも高く評価すべきポイントであると見なされています。

全固体電池がもたらす「新しい体験」

全固体電池が普及すると、ぼくらのカーライフはどう変わるのか?

全固体電池は「燃えない」だけでなく、「超急速充電」に非常に強いという特性も。

今回のブレイクスルーにより、ガソリン車と変わらない5分程度の給電時間で、1000km走るEVが現実味を帯びてきたと考えてよく、さらには「現在のEV用バッテリーの3倍」とも言われるエネルギー密度をもって「より軽く」「よりパワフルで」「より遠くまで走ることができる」EVの生産が可能となってきます。

EV用バッテリーシェアNo.1のCATLが「ソリッドステート(全固体)技術はEV業界が考える特効薬ではない」と衝撃発言。実現の難しさ、その危険性について言及
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※画像はイメージ

ただ、これまでは「たとえ実現できたとしても、その価格が非常に高いものになる」とされており、一部の高級車、そしてスーパースポーツにしか搭載されないであろうとも見られていたのですが、今回は同時に「コスト」という課題もクリアしているため、その応用範囲が大きく拡大し、普及価格帯のEVにも搭載されることとなるのかもしれません。

中国のバッテリーメーカーがついに「ソリッドステートバッテリー(全固体電池)の実用化に成功した」と発表。コストは従来のリチウムイオン電池の+15%、生産は2026年から
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結論|ラボから公道へ、全固体電池が走り出す

今回の『Nature Communications』誌に掲載された研究成果は、全固体電池を「実験室の贅沢品」から「実用的な工業製品」へと引き下げる歴史的な一歩。

もちろん、大規模な量産までにはまだまだ課題もありますが、圧力が5MPaで済むのであれば、トヨタや日産、フォルクスワーゲンが進めている全固体電池計画も、一気に加速する可能性があり、2020年代後半、EV市場は「バッテリーの進化」によって真の変革期を迎えようとしています。

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参照:CarNewsChina

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