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ポルシェ「マニュアルを絶やさない」──911責任者が特別仕様モデル投入を示唆、今後ポルシェのMTは「限定モデル」でしか存続できない?

「1グラムの差が勝敗を左右する」。ポルシェがかつてレーシングカーに、そして最新の911カレラTに採用したウッド製シフトノブは軽量性を追加した結果であった
Porsche

| 一時は「MTは無駄」「採算が取れない」としていたポルシェではあるが |

911のマニュアルはまだ生きている

現在、ポルシェ911のマニュアル・トランスミッション(MT)仕様はわずか2モデル、「911カレラT」と「911 GT3」のみ。

それでもポルシェは、限られた市場規模にとどまるとしてもマニュアル・トランスミッションの需要に応える姿勢を崩しておらず、911モデルライン責任者であるミヒャエル・レースラー氏は、英Evo誌の取材に対してこう語っています。

「お客様にマニュアル・トランスミッションを届けるために、あらゆる可能性を検討している」

ポルシェのマニュアル・トランスミッション
ハイブリッド化によって911カレラGTSからMTが消滅し、ポルシェ911の2025年モデルでマニュアル・トランスミッションを選べるのは「1モデルのみ」という事実

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「MTのみ」カレラT誕生の背景

ミヒャエル・レースラー氏は、カレラシリーズがデュアルクラッチ(PDK)のみになると知り、「マニュアル専用のカレラT」を実現させた人物ですが、欧州ではマニュアル比率がわずか2〜3%に留まる一方(かつてはこの逆の比率でMTが指示されていたのがウソのようだ)、米国では(先代)カレラGTS購入者の約半数がマニュアルを選択していたといいます。

ただし、新しい911彼らGTSのハイブリッドパワートレインはマニュアル・トランスミッションに非対応であり、そのため同氏は「カレラTではGT3に近い操作感のシフト機構を採用し、不要だった7速目を廃止することで、より純粋なドライビングフィールを追求した」ともコメントしています。

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Image:Porsche

「マニュアルトランスミッションのみ」、新型ポルシェ911カレラT発表。ファン感涙のウッド製シフトノブ装備、そしてMTのシフトパターンが社内外に用いられ「MT乗りの矜持を示す」仕様に
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世界的な課題:マニュアル需要の低下

さらにマニュアル車の人気低迷は、サプライヤーにも影響を及ぼしており・・・。

「部品供給には一定の数量が必要であり、それが問題を生む」。

それでも、ポルシェはマニュアルへのこだわりを捨てず、特別仕様車という形で存続の道を模索しているようですね。

なお、多くのサプライヤーが現在では量産車向けのマニュアル・トランスミッションの研究開発を縮小あるいは停止させているようで、その一方、MT車を(この時代に)搭載するクルマは「大パワー・高トルク化」する一方。

よって従来のマニュアル・トランスミッションでは対応が難しい例も出てきており、この意味でも「ハイパフォーマンスカーのMT搭載」が難しくなってきています(第一級の動力性能を持つスポーツカーにMTを搭載しようとなると、どうしても”特製”マニュアル・トランスミッションが必要になる)。

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特別仕様モデルでマニュアルを継続?

ミヒャエル・レースラー氏は、前世代の991型911につき、「多くの特別仕様モデルを実現する前に生産終了を迎えてしまった」とも振り返り、例えば「911スピードスター」はその代表例だと述べ、「もっと多くのアイデアがあったが実現できなかった」とも語ることに(実際のところ、ポルシェは様々な限定モデルを投入してきたように思えるが、中の人からすると、それでも”足りなかった”ようだ)。

現在のポルシェは、スポーツクラシック、ダカール、911 S/Tといった特別モデルを相次いで投入していて、これらの成功がマニュアル・トランスミッションを存続させるための最適な舞台であることを証明しているかのようですが、さらに最近では、GT3ベースのカブリオレ試作車も目撃されており、新たな限定モデル登場の可能性が高まっていることもわかります。

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こういった事情を鑑みるに、量産ハイパフォーマンスカーへとマニュアル・トランスミッションを搭載するハードルが着実に高まっていることがわかりますが、つまるところ、今後限定モデルでしか「MT搭載」が実現できない可能性があり、実際にアストンマーティンも「MT搭載は限定モデルに集約される」とコメント済み。

アストンマーティンがV12+MT、超ハードコアモデル「ヴァリアント」発表。フェルナンド・アロンソの個人的な要望から誕生し限定台数はわずか38台
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そしてポルシェは今後、911シリーズを順次ハイブリッド化してゆくものと思われ、そしてこの「ハイブリッドシステム」はマニュアル・トランスミッションとの組み合わせが技術的に困難ということもあって、ますます「ポルシェのMT」は希少になってゆくのかもしれません。

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Image:Porsche

ポルシェ「新型911カレラGTSの改造は実質的に不可能です。チューナーにとっては悪夢かもしれませんが」。なぜ992.2世代の911カレラGTSは「改造できない」のか
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まとめ

世界的にはマニュアル車の需要は縮小していますが、ポルシェは「マニュアル・トランスミッションの存続」に本気です。

911カレラTやGT3に続き、今後の特別仕様モデルにマニュアル・トランスミッションが搭載される可能性は十分に考えられ、ポルシェのDNAを象徴する“3ペダル”は「ノンハイブリッドモデルが継続される限り」存続し続けるものと思われます。

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参照:Evo

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