| ぼくホンダCR-X」のことをずっと忘れない |
さて、これまでにも様々なクルマにつき、「自分だったらこうする」「昔のクルマを現代に蘇らせるとこうなるだろう」というレンダリングを公開してきた本職のカーデザイナー、スケッチモンキー氏(ふと思ったが、”このクルマの次世代モデル”といった未来についてはレンダリングを公開していないようだ)。
そんな同氏ですが、今回はホンダの名車、「CR-X」につき、新型車として2021年に登場したらという前提のレンダリングを公開しています。
ホンダCR-Xはこんなクルマ
ホンダCR-Xがはじめて登場したのは1983年。
このときは「バラードスポーツCR-X」と呼ばれていましたが、それは「バラード(シビックの4ドア版)」の「スポーツバージョン」だったから(そのまんま)。
要はシビックの遠縁にあたり、しかしボディスタイルはリアを下げたクーペ風で、ボックス形状を持つシビックとは差別化されています。
なお、最大の特徴はスパっと切り落とされたような形状を持つリアエンド。
これは一般に「コーダトロンカ」と呼ばれるデザインでもあり、アルファロメオTZシリーズでもおなじみです。
コーダトロンカは1960年代まで遡ることができ、当時無敵の速さを誇ったアルファロメオSZ(スプリント・ザガート)の空力的欠点をカバーするために採用されたものだとされています。
例えば当時のクルマの多くはリアエンドがこんな感じで丸くデザインされていて、しかしこの形状が原因となり、リフトが発生したりと高速安定性に不安があったよううですね。
同様の例としては初代アウディTTがありますが、「お椀のようなデザイン」を再現するためにリアを丸く設計したものの、これがリフトを誘発し事故につながるとされ、急遽リアスポイラー装着のうえ発売されることとなっています。
そして、この欠点を解消するためにザガートが考えたのが「コーダトロンカ」。
テールをスパッと切り落とすことで、オーバーハング重量増加を最小限に抑えて「ロングテール」を実現したということになります(ザガートは航空機の設計も行っていたとされるので、空力には明るかったのだと思う)。
なお、形状こそコーダトロンカではないものの、同様の理論は現代のクルマにも多く見られ、たとえばアルファロメオ・ステルヴィオのリアサイドは、リアフェンダーからテールゲート、リアバンパーへとそのまま丸く巻き込んだデザインを持たず、いったん「段差」が設けられてからテールゲートへとラインが続きます。
つまりここでいったんボディ表面を流れるエアを剥離させているわけですが、これは「概念的コーダトロンカ」と言えるかもしれません。
二代目CR-Xも「コーダトロンカ」
そして1987年には二代目CR-Xが登場。
このときには「バラード」が販売終了になっていたために「バラードスポーツ」が取れて「CR-X」という名称に変更されていますが、やはりシビックの派生車種という位置づけは変わらず(海外ではシビックCRXとして販売されていた)。※愛称は「サイバースポーツ」
そして見ての通り、初代同様にコーダトロンカ、そして印象的なバーチカルウインドウを採用していることがわかります。
同年代のシビックに比較すると軽量で重心が低く、しかしちょっと高価であったことからかシビックのほうがよく売れていたようです(CR-Xの後部座席が絶望的であったのもその理由か)。
サスペンションはF1マシン同様の「前後ダブルウイッシュボーン」という構造を持ち(初代はストラット+トーションビーム)、とにかく高い戦闘力を誇ったクルマとして記憶されています。
なお、当時ぼくはトヨタ・カローレレビン(ハチロク)に乗っていましたが、はじめてサイバースポーツCR-X)を運転した時、「こりゃどうやっても勝てんわ・・・」と感じたことを今でも覚えていて、まさに反則ともいえる速さを持つクルマであったと思います。
2021年版ホンダCR-Xはこうなる
前置きが長くなりましたが(CR-Xについては語り尽くせないほどの思い入れがある)、ここからは「新型ホンダCR-X」。
ベースとなるのはこちらの画像です。
まずはモールなどを消去してすっきりボディへ。
さらにCピラー形状を変更し、コーダトロンカを強調しています。
リアフェンダーも盛り上がってマッスルな印象ですね。
テールランプやリアバンパーを現代風へ変更開始。
ホイールやフロントフェンダー、リア周りも微調整。
リアディフューザー、サイドステップ、その他細部を調整して完了。
こちらはビフォー・アフター(正直言うと、コーダトロンカをもっと強調してほしかった)。
なお、ホンダCR-Xは3代目(1992年)へと移行するにあたり「デルソル」へとサブネームが変更され、その性格がおだやかに(もうコーダトロンカ形状は採用されていない)。
一説によると、2代目CR-Xの事故率が高すぎて問題になったために「走り」要素を薄めた、とも言われていますね。
おそらくはもう二度とCR-Xの名が復活することはないと思われますが、エポックメイキングなクルマのひとつとして、ぼくはいつまでも記憶にとどめたいと思います。
VIA:TheSketchMonkey