
| BMWがDCT(デュアルクラッチ)を採用終了へ |
もはやデュアルクラッチが生き残る道はない?
近年、多くのメーカーが採用してきた DCT(デュアルクラッチトランスミッション) が勢いを失い、従来型のトルクコンバーター式ATが再び主流になりつつあるというのが現在の一つのトレンドです。
そしてこの潮流を決定づけたのがBMWの「全車トルクコンバーター式ATへ移行」という方針で、BMWはこれまでM3、M4、M5、M6などのMモデル、さらにはE92 335iSや135iなどにもDCTを搭載していたものの、2023年にはBMW M部門の開発責任者であるダーク・ハッカー氏が「今後のMモデルからDCTとMTの両方を段階的に廃止する」と発表し、実際にいま「そのとおりになりつつある」わけですね。
DCTが廃止される理由 ― BMWが挙げたポイント
まずはダーク・ハッカー氏が語った「DCT廃止の」理由は以下の通り。
● 1)快適性の不足
DCTは変速の速さが魅力ではあるが、低速域でのギクシャク感や駐車時の操作性の悪さが顧客から指摘されていた。
● 2)コストの高さ
DCTは構造が複雑で、従来型ATよりも製造コストが高い。
● 3)信頼性と利便性
ユーザーのフィードバックでは
「DCTは低速で扱いにくい」「日常走行ではATの方が快適」
といった声が多かった。
■ ZF製8速ATの性能がDCTに追いついた
BMWは現在、ほとんどのモデルにZF製8HP(8速AT)を採用していますが、同社によればこのATは以下のような利点を持っており、さらに驚くべきことにBMWはレース用マシンにもZF 8HPを使用しているため、BMWがATの性能を完全に信頼していることがうかがえます。
- 燃費性能でDCTより優れる
- RWD/AWDの両方に対応
- 変速スピードはDCTと同等
■ 他メーカーも「DCT離れ」へ
BMWだけでなく、他社でもDCT離れ、あるいはトルコン式ATの採用が進んでおり、マセラティ、アストンマーティンも上述の「8HP」の採用を進めているのが現状で、フォードも自社の「パワーシフト」からトルコン式ATへ、そしてヒョンデもトルコン式ATへと回帰中。
■ なぜトルクコンバーターATが復権したのか?
こういった「トルコンATへの回帰」につき理由は単純で、それは弱点であった「変速速度」が大きく改善したため。
従来、DCT最大のメリットは変速の速さであったものの、現在のATは技術進化によりこの差がほぼ消失しており、そのために・・・。
- スムーズさ
- 信頼性
- 価格
- 多用途性(AWD対応など)
において優れるトルクコンバーターATが見直されているというわけですね。
なお、DCTを率先して採用したのはVWグループではありますが、低速域や渋滞時には「扱いづらい」「ギクシャクする」という声も多く、さらには「トラブル(故障)が多い」という指摘も。
よってフォルクスワーゲングループが「DCT離れ」「トルコンAT」の採用を進めることになれば、自動車業界における「DCT離れ」が一気に加速するのかもしれません。
参考までに、現在のフィルクスワーゲングループにおいて、普及価格帯のクルマでトルコンATを使用する車種は「ほぼゼロ」、しかし「ハイパワー車」「プレミアムカー」「重量級」ではトルコン式ATの採用例も。
たとえばゴルフやポロなどは「DCT」ではありますが、アウディ「A7」「Q8」、ポルシェでは「カイエン」、ランボルギーニだと「ウルス」、ベントレーだと「ベンテイガ」がトルコンATを採用しています。※ただ、アウディRS4 / RS5はDCTからトリコンATへと変更されているので、VWグループでもトルコンATのほうが優れるという判断が働いているのかもしれない
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■ DCTは完全消滅するのか?
しかしながらDCTが完全に消滅するわけではなく、高性能スポーツカー向けに限定される可能性が高く、その理由は「スポーツカーは快適性よりも効率性や俊敏性が重視されるから」。
実際のところポルシェのスポーツモデル(911や718)、マクラーレン、フェラーリ、ランボルギーニのスーパーカーラインアップはDCTを使用し続けており、特にランボルギーニは(レヴエルト、テメラリオ用に)新しくデュアルクラッチ・トランスミッションを開発しているため、今後もDCTは“ピュアスポーツ専用”のギアボックスとして生き残るであろうと思われます。
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