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トヨタが「延命ではなく新生」と語る新型エンジンの概要を公開。エンジン単体ではなく車両のパッケージングまでを含めた新設計、まさにゲームチェンジャーとなりうるか

2024/06/07

トヨタが「延命ではなく新生」と語る新型エンジンの概要を公開。エンジン単体ではなく車両のパッケージングまでを含めた新設計、まさにゲームチェンジャーとなりうるか

Image:TOYOTA

| 日産のようにガソリンエンジンへの投資を終了させるメーカーもある中、トヨタは内燃機関を諦めない |

一部エンジンは「ハイブリッド前提」の設計を持ち、まさに新世代の発想だと言える

さて、先月末にトヨタ、スバル、マツダは「カーボンフリーの実現に向けて内燃機関の開発における協力体制を構築する」と発表していますが、この3社は「三者三様」の方法にて内燃機関(ガソリンエンジン)の開発を行うこととなります。

そしてトヨタは(すでに発足させていた大規模エンジン開発プロジェクトのもと)新型1.5リッターおよび2.0リッターエンジンの開発を行うこととなり、これらのエンジンについて、トヨタいわく「延命ではなく新生」、そして「ゲームチェンジャーとなるソリューションである」「エンジンリボーン」とも。

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トヨタの新型エンジンは「現行の内燃機関とは全く異なる」

今回トヨタはトヨタイムズ、そしていくつかのカーメディア経由にてこれら新型エンジンの情報を伝えていますが、中嶋裕樹CTOは現行の内燃機関と比べると「まったく異なる」ものになると述べています。

この「従来と異なる」のは主に熱効率の点だといい、トヨタは「ミライの開発を通じ、エンジンの熱効率についての理解を深めた」とコメントしているので、ミライもけして意味がなかったわけではないのかもしれません。※新型エンジンの熱効率については言及されていないが、トヨタはすでに40%を達成しており、日産はe-Powerテクノロジーにより、さらに高い50%を誇っている(ただしこのエンジンは直接車輪を駆動するものではない)

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TOYOTA

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新型1.5リッターおよび2.0リッターエンジンはいずれも「⼩型・⾼効率・⾼出⼒」を目指していて、1.5リッターエンジンだと「NA」「ターボ」の二種類が用意され、NA版(自然吸気)だと、従来のNAエンジンに比較して体積が10%小さく、全高が10%削減されます。

これによって車両のフロントを低く抑え重心を下げること、ひいては空気の流れを最適化する(セダンだと空気抵抗削減によって12%の燃費改善が期待できる)ことが可能となるので「車両のパッケージングに革命を起こす」という目的の実現ができるわけですが、その反面、エンジン全高を下げたためにピストンストロークが短くなってしまい、結果的にトルクが失われてしまうことに。

中嶋裕樹CTOはこれについて「困難な課題であった」と述べていますが、この課題を解決するのがエレクトリックモーターで、つまりこの新型エンジンは「ハイブリッドシステムありき」にて開発されたエンジンだと考えてよく、その点ではまさに「エンジンリボーン」。

ちなみに1.5リッターターボだと(新型エンジンと同等に性能を持つ、従来の2.5リッターNAに比較して)さらにコンパクトになり、そしてターボエンジンということでトルクに勝り、重量の重い、そして人やモノを載せることが多い車両に使用されることとなるもよう。

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TOYOTA

そして2リッターターボエンジンも(同等の性能を持つ従来の2.4リッターターボに比較して)体積は10%減、全高が10%低くなり・・・。

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燃費、出力共に2.4リッターターボを上回ります。

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ただしこれらエンジンが期待通りの成果を発揮するかどうかには注意を要する

ただ、注意を要するのは、この「出力や燃費」に関する数値は「エンジン単体」での計測によるものと思われること。

よって、実際に車両に搭載された際には「この数値通りの改善が期待できるかどうか」は未知数であり(さらに1.5リッターNAだとハイブリッドとの組み合わせが前提なので重量とコストが既存1.5リッターNAに比較して大きく増加)、これはマツダの「世界を変えるはずだった」SKYAKTIV-Xエンジンと同様の課題をはらんでいる可能性もありそうです。

マツダのSKYACTIV-Xは「コスト」が大きな(そして主な)課題となっており、トヨタはもちろんこのあたりを考慮しているものと思われ、さらにトヨタはパワーユニットのみではなく「車両パッケージング含めて」効率の改善を見込んでおり、よって物事がすべてうまくゆけば、文字通りのゲームチェンジャーとなるのかもしれません。

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参照:Automotive News, TOYOTA

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