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| V10サウンドの伝説をバッテリー / モーターに置き換える衝撃と論争 |
レクサスは「電動化」LFAにて世界を再び驚かせることができるのか
かつて世界を驚愕させたレクサスの伝説的なスーパーカー、初代LFA。
そのV10エンジンが奏でる唯一無二の咆哮(ヤマハとの共同開発によるもので、世界でもっとも美しいエキゾーストサウンドの一つだとされる)と最先端のカーボンファイバー構造は今やカルト的な崇拝の対象となっており、実際に運転した者は極めて幸運な存在とされ、至福のサウンドに酔いしれることになると言われています。
そういったLFAではありますが、その名が15年の時を経て、「Lexus LFA Concept」として電気自動車(EV)で復活すると宣言されたのがつい数日前のこと。
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V10エンジンをバッテリーパックに置き換えるというこの決定は、EVファンでさえも「冒涜だ」と主張するほどの論争を呼んでおり、いったいどうすればこういった反対勢力を沈静化できるのかを考えてみましょう。
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EV版LFAが乗り越えるべき課題と成功の条件
まず前提として認識しておくべきは、レクサス「LFA」とは2010年から2012年に生産された「先代モデル」のみを指すのではなく、レクサスにおける「フラッグシップ」そのものを指す名称です。
まずLFAはコンセプトカー「LF-A」として発表され、その際の意味は以下の通り。
- Lexus Future Advance・・・日本語に訳すと「レクサスの未来への前進」という意味合いになり、当時まだ本格的なスポーツカーを持たなかったレクサスにおける、フラッグシップスポーツカーのコンセプトとして提示される
そして市販バージョン「LFA」では以下のように意味合いが変更されています。
- Lexus
- F(Fuji Speedway由来のFパフォーマンス)
- Apex(頂点、最高峰を意味する英語)
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つまりレクサスLFAは、単なる高性能車というだけでなく、レクサスが次世代に受け継ぐべき技術と技能を体現するモデルの象徴とされており、代々引き継がれてゆく名称でもある、というわけですね。
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よって次期LFAがその存在を「LFA」として世に示し、誰もが納得する存在となるためには、初代LFAが「忘れられない体験」を提供したように、EV版LFAコンセプトも、単なる速いEVでは終われない「何か」が必要とされることはまちがいなく、現在のエレクトリックーパーカーが提供できていない「没入感と一体感」こそがLFAの名前を冠する上で不可欠な要素となるのかもしれません。
つまり、「もしトヨタが本気で、初代に匹敵する、いやそれ以上の『運転における感動』を作り出せるなら、このEV(新型LFA)は成功する」という確率が飛躍的に上昇してくるものと思われます。
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最大の課題:単なる「速さ」からの脱却
今日のEVは、ボルボのハッチバックでさえ0-100km/h加速を3.4秒で達成できるなど、直線加速のパラダイムを一変させる存在です。
さらには中国製EVでも「2秒以下」を記録するクルマも少なくはなく、そのため、単に「速い」だけの電動スーパーカーにはもはやほとんどの人が興味を示さないのもまた事実。
よってEV版LFAが成功するためには、この「速さのコモディティ化」を打破し、エレクトリックスーパーカーがまだ達成できていない領域へと踏み込むことが何よりも重要になってくるものと考えられます。」
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- 現在のEVスーパーカーの欠点: エンジンのサウンド、クルマとの一体感、そしてバッテリーの重さに煩わされない卓越したハンドリングといった、内燃機関スーパーカーが提供してきた「体験」が決定的に欠けている
成功の条件:トヨタが持つ「技術的な遊び心」
EV懐疑派のトヨタがLFAの名をEVに与えたということは、彼らがEVの課題を克服する「特別なソリューション」を持っている可能性を示唆しています。
初代LFAが「カーボン技術」「V10エンジン」「航空産業レベルの素材・加工品質」をもってそれまでのスーパーカーにおける常識を覆したことを考慮するに、電動版LFAは多くの人が考える「EVは楽しくない」という固定概念をひっくりかえさねば「LFAを名乗る資格はない」とも考えられるわけですね。
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| 成功に繋がる可能性のある要素 | 初代LFAの精神との繋がり |
| シミュレートされた体験 | 「運転の楽しさ」の追求(豊田章男会長の思想) |
| 次世代バッテリー技術 | 軽量化と低重心化 |
| 独自の変速機 | ドライビングへの没入感 |
トヨタ・レクサスが隠し持つ「未来のドライビング体験」
初代LFAはトヨタのマスタードライバーであった成瀬弘氏(開発中の事故で逝去)と豊田章男氏(当時の会長)によって、「退屈なトヨタ」のイメージを打破するために文字通り命がけで開発されており、LFAの名前が背負うのはその「熱意と魂」。
現在、レクサスはLFAコンセプトにて「Discover Immersion(没入感の発見)」というコンセプトを掲げていますが、根拠となるのは以下の要素です。
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① EVでありながら没入体験を創出する「マニュアルトランスミッション」と「サウンド」
- シミュレートされたLFA V10サウンド
- クラッチペダルとエンストを伴うシミュレートされたマニュアル変速機
この技術はEVでありながらも内燃機関の「対話感」をドライバーに提供しようとするトヨタのユニークな試みで、「世界で最もEVに懐疑的だったメーカーが、EVを楽しくするための技術」を開発しているという事実は、このLFAコンセプトが単なる「規制対応」のクルマではないことを裏付けています。
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一方、「EVを楽しくする方法」が「ガソリン車の模倣」であるとも受け取ることができ、これが単なる模倣にしか過ぎないのであれば、結局「EVはガソリン車の代替であってそれを超えることができない」ことを証明するようなものではあり、しかしトヨタはそのあたり「ちゃんと」考えているのだと捉えていいのかもしれません(なんといってもLFAは革命を起こさねばならない存在である)。
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② GR GTとの技術共有
LFAコンセプトは、同時に発表されたV8ツインターボエンジン+ハイブリッドを搭載する「Toyota GR GT」およびレーシングカーの「GR GT3」と、オールアルミニウム製骨格などのコア技術を共有しています。
- LFAコンセプト(EV): 搭載されるEVシステムは1,000PS(約735kW)超を発揮するとされ、GR GTとは電動化によって差別化される(※非公式情報も含む)
- GR GT(内燃機関): 4.0L V8ツインターボ+1モーターハイブリッドを搭載し、システム最高出力は650PS以上を目標としている
この「ガソリンのGR GT」と「電動のLFAコンセプト」という二本立てのフラッグシップ戦略は内燃機関のファンもEVのファンも満足させるための周到な布石とも考えられるものの、レクサスLFAの「専用に設計されたカーボンシャシー」に対し、LFAコンセプトの「トヨタと共通のアルミシャシー」というところはちょっと不安が残る部分でもありますね。
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結論:LFAの名前を汚さない「特別な体験」を創造せよ
EV版LFAが成功する唯一の条件は、初代LFAがそうであったように、「ただ速い」という性能を超え、「忘れられない、唯一無二のドライビング体験」を提供すること。
もしトヨタが次世代バッテリーによる大幅な軽量化、そしてシミュレートされた変速機やサウンドといった独自の技術を駆使して、既存のEVスーパーカーにはないドライバーとの深い一体感を実現できるのなら、EV版LFAはV10エンジンを持たないLFAとして、その伝説を未来へ繋ぐ資格を得ることは想像に難くありません。
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その一方、想像の範囲にとどまり、基礎技術の使い回しによって「LFA」の名を名乗るだけのクルマであれば猛烈な批判を呼ぶことはまちがいなく、しかしトヨタはそのあたりを(GRスープラを通じての経験により)十分に理解していると考えてよく、今後のLFAコンセプトの市販へ向けての進捗に期待したいと思います。
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