
| メルセデス・ベンツが打ち立てるEV性能の新しい基準とは |
新しい時代では「自動車の性能」のあり方が変わってくる
EVの台頭により、自動車の「性能」の捉え方が変わりつつあります。
従来は0-100km/h加速や最高速度、ニュルブルクリンクのラップタイムが指標でしたが、EVでは「効率」や「航続距離」も重要なパフォーマンス要素として捉えられ、特に充電インフラがまだ十分に整っていない現在、1回の充電でどれだけ遠くまで走れるかは非常に大きな意味を持っています。
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メルセデス・ベンツがソリッドステートバッテリー(全固体電池)搭載プロトタイプの公道テストをついに開始。一回の満充電あたり航続距離は約1,000km、EV新時代の到来か
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メルセデスEQS、固体電池で1,200km走破
そこで今回、メルセデス・ベンツは最新の実証実験として、固体電池を搭載したEQSでドイツ・シュトゥットガルトからスウェーデン・マルメまで約1,200kmを無充電で走行するという偉業を成し遂げていますが、これは通常の道路走行を想定した「リアルワールド条件」でのテストであり、到着時には約160km走行分のバッテリー残量が残っていたといいます。
Image:Mercedes-Benz
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さらに重要なのは固体電池(ソリッドステートバッテリー)を搭載しているといえど、通常のEQSの車体を用いて達成した記録ということで、つまり「記録達成のために特別に製作した、実用に耐えることができないような、そして一般には販売できないような高額なクルマ」ではなく、あくまでも「市販できそうな」クルマでこの記録を打ち立てたということ。
なお、今回の記録は、2022年に同社のコンセプトカー「Vision EQXX」が記録したを超える結果であり、この2年の技術の進歩によって、量産モデルに近い車両が「記録達成用の極端な仕様を持つコンセプトカー」を凌駕したという事実をも示しているわけですね。
Image:Mercedes-Benz
固体電池の優位性
メルセデス・ベンツによれば、このEQSは世界で初めて「リチウム金属系固体電池」で公道を走った車両になったとのことで、今回使用されたバッテリーパックは以下のような特長を持ち、効率と軽量化を同時に実現しています。
- エネルギー密度:450 Wh/kg(従来EVは200 Wh/kg程度)
- 従来のEQS比で25%多い容量を持ちながら重量・サイズはほぼ同等
- 液冷システム不要、空冷で冷却可能※そのぶん軽量化も期待できる
課題としては、充放電時にセルが膨張・収縮するという問題がありますが、メルセデス・ベンツは空気圧アクチュエーターでセルを圧縮する仕組みを導入し、安定性を確保していることについても触れています。
Image:Mercedes-Benz
EVの未来を変える技術
この「固体電池」は従来型リチウムイオン電池に比べ、以下のような利点を持ち、次世代EVのブレークスルーとして期待されていて、現在各自動車メーカーそしてバッテリーメーカーがこぞって実用化を急いでいる技術でもありますね。
- レアメタル(コバルト等)使用の削減
- 急速充電の可能性拡大
- 長寿命化
- 発火リスク低減
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長距離性能を誇示するメルセデス・ベンツ
1,200km航続という成果だけでなく、メルセデス・ベンツは先日「AMG GT XX コンセプト」で24時間で3,405マイル、8日間で24,901マイル走破という耐久記録も樹立。
Image:Mercedes-Benz
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メルセデスAMG「コンセプトGT XX」、電動車で世界耐久走行記録を樹立。わずか8日で地球一周分の走行距離を走りきる。チャレンジにはF1ドライバー、ジョージ・ラッセルも参加
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性能と効率、双方の領域でEVの新時代を切り開いていると考えてよく、これもまた「EVでの覇権を握るべく」ノイエクラッセを展開するBMWに対する牽制なのかもしれません。
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メルセデスAMG GT XXコンセプト、驚異の「1メガワット充電」を達成。理論上では「ガソリンを注入するよりも短い時間で同じ距離を走れる電力をチャージ」
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なお、メルセデス・ベンツは電動化技術に対する様々な投資、そして企業の買収を手広く行っていることでも知られており、将来の電動車業界は「メルセデス・ベンツ抜きでは」語れなくなる可能性もありそうですね。
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