
| 2025年第3四半期(Q3)販売実績:メルセデス・ベンツ、高価格帯(Top-End)とEVが牽引 |
メルセデス・ベンツは「数(販売台数)よりも質(利益率)」へと移行しつつある
メルセデス・ベンツがグループ全体における2025年第3四半期(Q3)の世界販売台数を公開し、その内容によれば「乗用車とバン(商用車)を合わせて525,300台」。
中国の市場環境や米国の関税対策に伴う慎重な在庫管理の影響を受けましたが、高価格帯(Top-End)車両の販売は世界的に増加し、電動車(BEVおよびバン)の販売も四半期比で大きく伸びている、とアナウンスされています。
メルセデス・ベンツ乗用車(Mercedes-Benz Cars)の動向
なお、525,300台のうち乗用車の販売台数は441,500台となり、これは前年同期比で-12%という大幅減。
その詳細は以下のように発表がなされています。
トップエンド(Top-End)車両が成長を牽引
- 高価格帯(Top-End)車両の販売は、前年同期比で10%増、前四半期比でも5%増の67,800台を記録し、販売全体に占める比率は15.4%に達する
- 特に、Sクラス・ファミリーの販売台数は、前四半期比11%増の28,300台に増加。世界で販売されたSクラスの3分の1がメルセデス・マイバッハ
- Gクラスが31%増、メルセデスAMGも6%増と、高い顧客需要が続いています。
- 【注目市場:中国】 全体販売は減少したものの、中国市場における100万人民元以上の価格帯セグメントでは、販売が前年同期比13%増を記録し、メルセデス・ベンツが引き続き市場シェアトップを維持
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電動化が本格的に加速:新型CLAが貢献
- バッテリーEV(BEV)の販売は新型「電動CLA」の納車開始が牽引し、前四半期比で22%増
- プラグインハイブリッド(PHEV)の販売も20%増となり、xEV(BEV+PHEV)全体の販売台数は96,300台(前四半期比3%増)
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地域別ハイライト
そしてこちらは「地域別」の概況で、全体販売が中国(-27%)や米国(-13%)での在庫調整の影響を受けた一方、好調な市場も目立っており、そのセグメント同様に「大きくばらつきが出ている」ことがわかりますね。
地域 | Q3 2025 vs Q3 2024 | 主な牽引国 |
ヨーロッパ | 2%増 | ドイツ(3%増)、スペイン(5%増)、ポーランド(20%増) |
湾岸諸国 | 33%増 | - |
トルコ | 15%増 | - |
南米 | 45%増 | - |
まとめ:今後の展望
メルセデス・ベンツは、中国での市場環境や米国関税への対応など、外部環境の影響を受けつつも、高収益なTop-Endセグメントの好調を維持し、新型CLAの投入により電動化戦略を加速させていますが、同社は過去に「コンパクトセグメントでは効率化を図り、その一方でAMG、Gクラス、アッパーセグメントといった、高利益製品群に注力する」ともコメントしているため、今回の(販売台数が減った)内容は「おおよそ想定通り」なのかもしれません。
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もちろん、トランプ関税、そして中国市場の「急激な」落ち込みは計画外であったのかもしれませんが、進む方向性としては変わりはないものと思われ、今後もより「高価格、高付加価値」を目指し、台数に依存しない利益獲得体制を構築してゆくものと思われます(多くのプレミアムカーメーカーがこの方向性を目指している)。
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