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世界に1台、「4ドアのポルシェ911」が存在した。当時ポルシェ911が何台も購入できるほどのコストをかけて改造を行った男の物語【動画】

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| この「57年も前に」ポルシェ911を4ドア化した人物は先見の明を持っていたと考えていいだろう |

現代では(911ではないが)4ドアのポルシェは大人気である

さて、ポルシェ911は昨年に60周年を迎えていますが、その歴史の長さ、そして販売台数に比して「コーチビルト車両」が少ないように思います。

例えばフェラーリだと(ポルシェ911よりもずっと販売台数が少ないにもかかわらず)SUV風、ワゴンボディなど様々な車両がコーチビルダーによって作られているものの、ポルシェだとそういった例があまり見られない、ということですね(911が登場した時代にはもうコーチビルダーが斜陽になっていたという背景もあるのかも)。

ただ、それでもポルシェ911のコーチビルト車両が皆無かというとそうではなく、今回紹介する「4ドアの911」はそういった数少ない例の一つです。

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世にも奇妙な「4ドアの911」はこうやって作られた

この「4ドアのポルシェ911」は現在ピーターセン自動車博物館に展示されており、テキサス州でフォルクスワーゲンやポルシェを販売していた著名な自動車ディーラー、ウィリアム・ディックの依頼で製作されたもの、

ウィリアム・ディックはフェラーリやマセラティなどのエキゾチックなスポーツカーを好む一方、家族向けのより実用的なスポーツカーを欲しがっており、そこで欧州含め世界中を駆け回って「理想のクルマ」を作ってくれるコーチビルダーを探したのだそうですが、結果的にこのアイデアに興味を示したのは地元米国のコーチビルダー、「トラウトマン&バーンズ」。

Jalopy Jeff / youtube

そこで同社によってポルシェ911の「4ドア化」プロジェクトが開始されることとなりますが、まずはルーフが取り外されてホイールベースが275センチへと延長され、ルーフは53センチ長く、車両自体は29センチも延長されています。

なお、この後部ドアは別のポルシェ911から移植されたもので、前後逆向きに取り付け、つまりは「観音開き」。※後部ドアのウインドウには電動開閉機構が取り入れられ、サンルーフ用モーターを移植するなど大改修が行われている

完成までに要したのは8ヶ月で、1967年8月にようやくこのクルマは路上を走ることになりますが、新しいフックス ホイール、スポルトマティック トランスミッション(AT)、および(当時)グリーンのボディカラーとともに納車され、同年のクリスマスプレゼントとしてウィリアム・ディックの妻ヘと贈られたという記録が残ります。

このポルシェ911”4ドア”のインテリアはエレガントなブラウンレザーでトリミングされ、このインテリアを担当したのは室内装飾業者のトニー・ナンシー。

このレザーのほか、インレイやリヤトレイにウォールナットが使用されるなどふんだんにコストがかけられ、そのカスタム費用は当時で2,000ドルを要したと推定されており、これは現在の貨幣価値だと約2765万円に相当します。

この金額を投じるならば、当時ほかの(どんな高級な)4ドアセダンを購入することもできたはずですが、わざわざポルシェ911をベースに選び、新車のポルシェ911が何台も購入できるほどのコストを掛けた理由は今となっては謎のまま。

加えてフェラーリやマセラティではなくポルシェ911を4ドアにしようと考えた理由についても知ることはできませんが、ウィリアム・ディックはそれだけポルシェ911に対して様々な可能性を見出していたのかもしれません。

その後ポルシェは数十年かけて「4ドア」を市販する

実際のところウィリアム・ディックはポルシェに対しても「4ドアのポルシェ911」を製造するようポルシェに対して進言する計画を持っていたそうですが、ポルシェ自身もまたその必要性を感じていたと見え、すでに1950年代には「4ドアポルシェ」の試作に取り掛かっていたと言われます。

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ちなみにこちらは4ドアではないもののロングボディのポルシェ911「B17」。

さらには928にて「H50」を製作したり、このほかにもワゴンボディを試作するなど実用性に対して強い興味を示していたこともわかります。

DP Cars / youtube

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さらには「989」も製作され、これがのちのパナメーラにつながったと考えて良さそうです。

Porsche 911 magazine / youtube

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なお、最初に市販モデルとして登場した「4ドア」ポルシェはパナメーラではなくカイエンではあったものの、現在のポルシェにおけるセールスは「4ドア」が多くを占めており、そう考えるとウィリアム・ディックは先見の明があったとも考えられます。

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参照:Jalopy Jeff, CARBUZZ, DPCcars, Trade Classics

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