
| アルファロメオ トナーレは本来そこまで危険なクルマではないはずだが |
公的機関とブランドの関係性が試される一件
イタリアの象徴的スポーツブランドアルファロメオと、国内治安を守る警察組織カラビニエリ(Carabinieri)。
この両者のコラボに異変が生じ大きな話題となっています。
このカラビニエリには歴史的にアルファロメオやフィアットが配備されることが多いのですが、最近配備された「トナーレ(Tonale)」パトカー仕様車の操縦性に関する苦情をめぐり、警察組合が正式にアルファロメオを相手取って訴えを起こし、アルファロメオが法的措置も辞さない構えを見せています。
参考までに、このカラビニエリについてもう少し掘り下げておくと、日本語では「国家治安警察隊」「警察軍」「憲兵隊」「軍警察」などとも訳されるイタリアの国家憲兵隊で、軍隊と警察の両方の機能: 陸軍、海軍、空軍と並ぶイタリア軍の第4の軍であり、国防省に所属する軍事組織です。
一方で、平時にはイタリアの警察機構の一部として、国家警察(Polizia di Stato)や財務警察(Guardia di Finanza)などと共に警察活動を行っていて、簡単に言えば、カラビニエリは軍隊の機能と警察の機能を併せ持つ、イタリアの重要な治安維持機関。
市民の安全を守るだけでなく、国の防衛や国際的な平和維持にも貢献しているエリート集団ですが、パレードやイベントの際に登場する音楽隊も抱えており、関西万博ではこのカラビニエリによる演奏を聴くことができる、とも報じられていますね。
ちなみにイタリアの警察車両は「水色にホワイト」というカラーリングではあるものの、カラビニエリのそれは「濃紺にレッド」。
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▶ カラビニエリが苦言:「この車、危険すぎる」
そして2025年4月29日、カラビニエリの労働組合「Carabinieri Trade Union Association」は、ローマ検察庁に対し以下の通り正式な苦情申立てを行うことに。
「高速走行時や悪路での走行性能に深刻な問題があり、任務遂行時の安全が脅かされている」
特に「移動無線対応ユニット」での運用において、トナーレのロードホールディング(接地性)が極めて不安定とのこと。
これは単なる愚痴ではなく、実際に勤務中の軍人たちから寄せられた複数の現場レポートに基づいています。
▶ 問題は“装甲車仕様”のパワー不足?
ここで一つの疑問が浮かぶのですが、「トナーレは本来そこまでドライバビリティに問題のあるクルマではないはず」。
トナーレはアルファロメオの前々CEOの元で開発が進められたクルマですが、その後に就任したCEOはこのトナーレの品質に納得できず、実際に改良を行うために数度の販売延期を繰り返し、「満を持して」の登場となっているわけですね。
そこで報道を見てみると、カラビニエリに配備されているのは、163馬力のエンジンを搭載し、部分的に装甲を施された警察専用仕様だそうで、それに対し、市販されているトナーレのPHEV仕様は285馬力を誇り、最新のガソリンモデルでも268馬力。
つまりカラビニエリバージョンのトナーレは「非力な仕様」で、「かつ重たい装備」が課されているというミスマッチが発生している可能性が考えられます。
▶ アルファロメオ側:「名誉毀損なら法的措置も」
こうした報道を受け、一方のアルファロメオは以下のように反論しているのが現在の状況です(イタリアメディア『Quotazioni』より)。
- 「我々の車両は最も厳格な安全基準を満たしており、各国の警察でも使用されている」
- 「技術と安全性は世界10万人超の顧客の信頼を得ている」
- 「必要に応じて関係当局との協議には応じるが、ブランドのイメージと名誉を守るため、適切な場で対応する権利を留保する」
つまり、「話し合いには応じるが、必要があれば訴える」という強気な姿勢を示しています。
▶ ネットでは「イタリア警察vsアルファ」の低リスク・ハイカロリードラマに注目
本件に関してはまだ司法判断が下されていないため、どちらが正しいのかは不明です。
ただしネット上では、
- 「アルファのクルマにそんなに期待してたの?」
- 「イタリア警察が急行してる理由って、ボロネーゼをスパゲッティにかけた奴の逮捕じゃないの?」
といった半分ネタ・半分興味本位の反応も多数。
本件は「命に関わる話ではあるが、日常生活には直接影響しない」という意味で、多くの人にとって「見ていて面白い」低リスクドラマとなっています。
今回の件は、官民連携による車両導入の難しさと、ブランドイメージをめぐる攻防の縮図とも考えられますが、「警察車両としての適性」「製造側の誠実性」「訴訟リスク」という三つ巴の中において、今後どのような結論が導かれるのかには注目ですね。
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参照:Carscoops