| 中国は「自動車の販売における主戦場」から「技術の中心」へと移り変わる可能性がある |
まさに誰も予期し得なかった変化がここにある
さて、現在変動著しい中国の自動車市場。
そのトレンドは他の国や地域とは全く異なるものとなっており、「EVの販売が非常に好調」「日米欧の自動車メーカーのクルマが売れない」という特徴を持っていていて、直近だと新車販売におけるEV比率が50%を超え、かつ中国の自動車メーカーの販売構成も50%を突破しています。
そしておそらくはこの傾向が加速こそすれ鈍化する可能性は非常に低く、「2025年には何が起こるのか」を予想してみましょう。
2025年の中国自動車市場ではこういった変化が起こるかも
そこでまず予想されるのが「新興EVメーカーの倒産」。
かつて中国には新興EVメーカーが500社ほど存在したと言われますが、現在すでに100社程度に(業績不振によって)減ってしまっているといい、そして2025年には継続的な価格競争とBYDの新エネルギー車(NEV)市場における支配によって、新興企業の約3分の1が倒産すると見られています。※NEVとは中国市場独特の呼称であり、EVとPHEV、FCEVを指す
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なお、すでに(ハイパフォーマンスEVで大きな話題となった)HiPhiも経営が破綻しており、バイドゥと吉利汽車が支援していたことで「安泰」と見られていたJiyueの倒産もつい先日報じられたばかりで、つまりは「名前が知られている会社でも突如倒産してしまう」のが現在の中国です。※一世を風靡したNetaもまた、2025年上半期に倒産する可能性が高いと見られる
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そしてもうひとつのトレンドが「NEV普及率の増加」。
現在のところおよそ新車販売の「50%」がNEVとなっていますが、2025年には55〜60%に達すると見られていて、車両そのものの売上は(中国の慣例に従い)年初の数ヶ月間に減少する可能性があるものの、1月29日の旧正月を過ぎると、2四半期目から売上が回復し、後半には加速することが想定されます。
特定の月では普及率が半分を下回ることがあるかもしれず、しかしほとんどの月では普及率が50%を超え、後半にはさらに増加するものと思われます。
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中国では自動車メーカーの合併や買収が進む可能性
このほかのトレンドとして「合併」「統合」が多数生じるとも報告され、たとえばかつて中国にて最大規模を誇った上海汽車(SAIC)はGMやフォルクスワーゲンとの合弁会社経由での販売が低迷することで困難な状況を迎えており、存続をかけて企業買収に動く可能性があるとも報じられています。
SAICは現在、主にWulingとの合弁会社に依存していますが、Wulingのモデルは価格が低い(いわゆるミニEV)ため利益が限られており、よってSAICは”より成功した新興企業”を買収し、売上と利益を確保しようとする可能性があり、たとえばすでにフォルクスワーゲンが出資しているXpeng(シャオペン)が買収先の候補として挙げられているようですね。
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そのほか、業績が芳しくないいくつかの国有企業(SOE)が合併する可能性があり、FAW(第一汽車)、Dongfeng(東風汽車)、BAIC(北京汽車)、GAC(広州汽車)が候補として報じられ、特にFAWとBAICの合併が最も可能性が高い、とも。
これは両社の売上が減少し、NEV市場で苦戦しているためで、「合併が両者を助けると考えられているからで、現在FAWが所有するブランドで売上が期待できるのはHongqi(紅旗)のみであるとも言われています。
一方で「合弁を解消する」例も登場すると考えられていて、最も可能性が高いのはヒョンデ、ジャガー・ランドローバー、フォード、そしてGM。
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ほとんどの合弁事業は売上が低迷しており、これはもちろん中国ブランドに比べてNEVの普及率が向上しているためで、中国市場におけるICE車からのシフトが進む中、これらの企業はますます厳しい状況に直面するのかもしれません。
一方でレクサスのように「合弁ではなく」自社のみで中国での活路を切り開こうとする自動車メーカーも登場するかもしれませんが、これはごく少数にとどまるものと見られます。
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このほか、技術的な面では「全固体電池」の実用化が想定され、2025年末にはいくつかの中国の自動車ブランドが全固体電池を搭載した新モデルを発表すると予測されています。
MG、GAC、またはChery(奇端汽車)が最も可能性が高いブランドで、いずれも固体電池の開発を進めており、2026年に量産を開始する予定だとされ、その発表は2025年の広州モーターショーでの発表が非常に有力と見られているもよう(早ければ4月の上海モーターショーでコンセプトモデルが発表されるかも)。
さらには「自動運転元年」となりそうなのが2025年でもあり、中国のいくつかのADASシステムが駐車から駐車までの完全なスマート運転を実現すると主張する可能性が大。
これらは、エンドツーエンドのAIシステムを使用ており、ファーウェイやシャオペンが最初にこの機能を発表する可能性がありますが、2025年末までには、複数の企業がこの技術を導入することになるのかもしれません。
最後に「販売」についてだと、2025年の中国の自動車販売台数は3,000万台に達し、中国は世界最大の自動車輸出国の座を保持し、輸出台数は650万台になると予測されています。
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BYDは引き続き中国最大のNEV販売自動車メーカーとなり600万台を販売するものと見られ、シャオペンは40万台以上を販売するものと目されます。
NIO、Li Auto(理想汽車)も一定の販売を獲得するものと思われますが、シャオミは2025年に販売台数を倍増させる可能性が報じられ、NIOを抜いて「中国の腫瘍自動車メーカー」となる可能性が指摘されており、その活躍に期待がかかるところですね。
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参照:CarNewsChina